研究課題/領域番号 |
23501138
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
西谷 まり 一橋大学, 国際教育センター, 准教授 (80281004)
|
キーワード | 日本語教師 / 不安 / 尺度 / 中国 / ベトナム |
研究概要 |
平成24年度は2つの研究を行った。まず第一に非母語話者日本語教師の不安尺度を作成し、次にそれを用いて、ベトナムと中国で調査を行い、非母語話者日本語教師と外国で教える日本語教師を比較分析した。 (1)非母語話者日本語教師不安尺度の作成:非母語話者日本語教師が有する不安について、先行研究とPAC分析を援用したインタビュー調査を基に不安尺度を作成し、それを用いて調査を行い、非母語話者日本語教師の不安の構造を明らかにした。因子分析の結果、「学生関係」、「自分の日本語・日本文化理解」、「授業実践力」の3つの要素が得られた。日本語教師教育では、「授業実践力」を高めることが重視されることが多いと予想されるが、「学生関係」についての指導及び、教師自身の日本語・日本文化の力を高める指導も重要であることが示唆された。 (2)ベトナム・中国の教師不安の比較:非母語話者日本語教師と外国で教えている日本人教師の不安を比較したところ、不安平均には有意差がみられないが、「学生関係」のみ日本人教師の不安が有意に高かった。中国人教師とベトナム人教師との比較では、不安の平均値と「学生関係」因子は、中国人教師の不安が高く、そのほかにも,中国人教師の不安が高い項目が多いことが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、非母語話者日本語教師不安を測定するための不安尺度を開発すると記載したが、開発が完成した。さらに、開発した尺度を用いて調査を行った。この調査結果を現在分析し、平成25年度の実験計画を策定し、準備を進めている。全体的に見て、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
開発した不安尺度では、測定しきれなかった可能性を踏まえて、尺度を再検討し、教師教育に活用していきたい。また、筆者は、外国人の日本語学習者の不安についての研究において、失敗の効用を認識させる指導が有効であることを証明してきた。転ばぬ先の杖を用意するだけでなく、不安を効果的に利用することも必要である。外国人日本語教師教育において、失敗の効用を認識させる指導方法を開発し、その効果を検証していきたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度夏学期の日本語初級の模擬授業(大学院修士課程の日本語教育専攻の日本人、外国人対象)において、不安調査に基づいた、個別フィードバックを行い、不安の変化を観察する。また、夏休み以降、ベトナム・ラオス・インドネシア等で非母語話者日本語教師トレーニングの場において、夏学期の実践によって得られた知見を基に、失敗から学ぶ日本語教師教育の実践及び評価を行う予定である。 未使用金額の146,948円については、調査相手方の日本語教育機関の都合で、調査が完了できなかったために生じたものであり、平成25年度の海外調査で使用する予定である。
|