研究概要 |
平成25年度は非母語話者の日本語教育実習において, 不安と失敗に着目したフィードバックが効果的であることを明らかにすることであった.その結果,自己評価の可視化と失敗から学ぶことの大切さを強調するフィードバックを返すことで,実習生が自らの日本語能力だけに焦点をあてることなく,学生との関係及び授業実践力についての配慮を促すことが可能であることが示唆された.事前不安が最も高かった実習生Aは最も大きく不安が軽減した.最終レポートでは「内省が効かないため,自分の言ったことがすべて正しいと言える自信がない」と日本語力についての不安をとりあげているが,導入と例文を作る時,なるべく学生の身近な話題を取り上げるなど,学生に親近感を感じさせることの大切さを学んだと述べている.これは,フィードバックの際に,常に学生の置かれている状況を考慮するように指導した効果が大きいと思われる.実習生Aの「日本語っておもしろいね」と思わせることの大切さを学んだという記述は,成長の一つの証と捉えることができるだろう.
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今後の研究の推進方策 |
自己評価の可視化だけでなく,実習生の相互評価と教師の評価も同時に可視化することで,それぞれのずれを知り,より効果を高めることが可能になると考える.その際,今回使用したレーダー型グラフ以外の見せ方も検討する必要がある,また, 「学生関係」,「自分の日本語・日本文化理解」,「授業実践力」の3つの要素別に提示することも効果的であると思われる. また,日本人の日本語教師教育にも,非母語話者と同様のフィードバックが効果的であるかどうかについても検討する必要があるだろう,実習生の成長につながる情意的及び認知的な効果的フィードバックの在り方を検討していく予定である.
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