研究課題/領域番号 |
23501139
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
佐藤 喜一 新潟大学, 教育・学生支援機構, 准教授 (00300517)
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研究分担者 |
柴山 直 東北大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (70240752)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 古典的テスト理論 / 分割統治法 / 等化の標準誤差 / 線形等化法 / 等パーセンタイル法 / 単一グループデザイン / ブートストラップ法 / 項目反応理論 |
研究概要 |
本研究の目的は、異なる二つのテスト間のスコアを対応づける際、既存の等化手法に分割統治法(divide and conquer algorithm)の考え方を応用した新しいリンキング技術を確立することである。本研究の準備段階において、二つのテストを等化する際、合計得点を用いて等化するよりも、テストを適切に分割して得られる分割テスト得点を用いて分割等化したほうが等化の標準誤差の点で有利な等化戦略となる可能性が示唆されていた。 平成23年度の前期は、分割等化の可能性をさぐるため、単一グループデザインのもと、二つのテストを単純に2等分、4等分、8等分した際の分割テスト得点を用いて分割等化を試みた。シミュレーション研究を通して、テストの分割が等化得点の推定値や等化の標準誤差にどんな影響を与えるのかを考察した。その結果、合計得点を用いて等化するよりも、分割等化したほうが等化の標準誤差の点で有利な場合があることが判明した。この成果は、研究発表「テストの分割等化が等化結果に与える影響について」(日本テスト学会第9回大会発表論文抄録集、116-117)としてまとめられている。 一方、等化戦略のちがいによる等化得点の推定値の比較については課題が残された。当初、平成23年度の後期には分割等化における等化の標準誤差の定式化を試みる予定であったものの、研究分担者との打合せを通し、その課題について先に解決を図ったほうがよいとの判断に至った。現在、等化戦略のちがいによる等化得点の推定値に優劣をつけるための指標の定式化に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間内に、1. 新しいリンキング技術の開発、2. シミュレーションによる開発技術の評価、3. リンキングの標準誤差の定式化、を予定している。現在、2.の課題の一つに取り組んでいるところであり、具体的には等化戦略のちがいによる等化得点の推定値に優劣をつけるための指標の定式化に取り組んでいる。その定式化については、完成まで7割程度の進捗状況と考えられる。3.については、今後の課題である。平成23年度の後期には当初計画の見直しがあったものの、おおむね順調に研究が進展しているものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究発表および研究分担者との打合せを通し、研究目的を変更しない範囲で当初計画を見直したほうがより有益な研究になるとの判断に至った。当初計画を大きく見直した点は、1. 少なくとも最初はテストが下位テストで構成されているような場面に限定して研究を進めること、2. 等化戦略のちがいによる等化得点の推定値についても研究対象とすること、である。 平成24年度の前期は、8月21-22日に開催予定の日本テスト学会第10回大会での研究発表を目標に研究を推進する。発表テーマは現在取り組んでいる課題とし、等化戦略のちがいによる等化得点の推定値に優劣をつけるための指標の定式化について発表する。その内容については、他の研究者の意見や研究分担者の意見を参考にしつつ、日本テスト学会論文誌あるいは海外の雑誌(Applied Psychological Measurement)などに投稿を目指す。平成24年度の後期は、分割等化する場合の等化の標準誤差について定式化を試みる。等化法としては、式の操作が比較的容易な線形等化法を用いた場合を考える。合計得点を用いて線形等化する場合の等化の標準誤差についてはすでに定式化されているので、その導出過程を整理して分割等化する場合の等化の標準誤差の定式化に活かす。平成25年度以降については、平成24年度後期の成果を研究発表すること、論文として投稿すること、開発技術を利用促進するためのソフトウェアの試作などを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述のとおり、平成23年度の後半において、研究目的を変更しない範囲で当初計画を見直すことになった。これは、研究発表を通して予期し得なかった新たな知見が得られたためであり、その見直しのためにかなりの日数を要することになった。そのため、研究環境の整備の一部(ノートPCの購入、ソフトウェアの購入・更新など)に遅れが生じ、約800千円を平成24年度に繰り越すこととなった。 前年度未使用額を含め、平成24年度の助成金の総額は約1,300千円となる予定である。このうち、150千円については、研究分担者へ配分する予定である。研究代表者の1,150千円については、研究環境の整備(ノートPCの購入、ソフトウェアの購入・更新など)に750千円、研究発表および情報収集のための旅費として150千円、論文の翻訳費用として200千円、その他の費用として50千円程度の内訳で活用することを計画している。
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