情報通信ネットワークを活用した遠隔教育手法を大学開放や地域の生涯学習・社会教育の学習・教育機会に導入する可能性を追求することにより、大学等の高等教育機関と地域の生涯学習・社会教育機関・施設の新たな連携のあり方を探るとともに、岐阜県内の大学間連携体制(ネットワーク大学コンソーシアム岐阜)との連携のもと、JR岐阜駅前に設けられた岐阜大学サテライト教室を利・活用した大学開放事業の具体像およびその運営上の課題を明らかにすることを目的として、大学関係者および地域の生涯学習・社会教育関係者に対して、聴き取り調査を中心に調査を進めてきた。その結果、遠隔教育手法を導入した生涯学習・社会教育の学習・教育機会に市民・住民のニーズがあるのかといった疑問、高価な機器・設備に見合った学習・教育上の効果がえられるのかといった疑問が多く聞かれた。こうした関係者の遠隔教育手法に対する消極的な意識を反映してか、岐阜県内の高等教育機関あるいは地域の生涯学習・社会教育の分野への遠隔教育手法の導入は、ここ10年ほど停滞ないし後退している。 関係者の遠隔教育手法に対する消極的な意識の根底には、それが導入された学習・教育機会において、教育者・指導者と被教育者・学習者との対面的・直接的な交渉・交流を欠いた関係性の中から、はたして十分な教育・学習効果が生まれるのかという、遠隔教育手法の効果性に対する不信・懐疑の気持ちがあるものと考えられる。 人間性や人格の形成途上にある青少年だけでなく、それらを一応完成させた成人・大人であっても、学習・教育を効果的に進めるためには、教育者・指導者との対面的・直接的な交渉・交流を通じた人間性・人格への働きかけが不可欠であるとする意識が関係者の間では強いのである。そうであるとすれば、遠隔教育手法に対する関係者の消極的な意識を克服することのできる種々の手立て・工夫を行うことが求められる。
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