本研究は,鳥取大学において学力試験(大学入試センター試験)を課さない入試区分のAO入試,推薦入試Ⅰ合格者に対して,大学入学までの学習習慣の継続を促すe-ラーニングを実施し,入学前教育としてe-ラーニングが効果的に活用できる方法を見出すことが目的である. 本年度は,平成27年度入試入学者までの学業成績とe-ラーニングの実施状況を調査した.これまでと同様,大きな差は見られず,入学直後の成績は,e-ラーニングの実施状況とある程度の相関が見られた.さらに,e-ラーニングシステムに2週間以上アクセスしていない者にメールで警告を行ったところ,長期間にわたってe-ラーニングをしない者が大きく減少した. また,e-ラーニングシステムを一部改良した.これまで,英語については,プレースメントテストの結果で学習内容を3段階に分けていた.そこで英語以外の科目でも同様に学習内容を変えることとした.具体的には,e-ラーニングを行う前に事前テストを実施し,その成績によって出題数や難易度を変更した.このことで,学力の高い者が簡単な問題に取り組むことでモチベーションを下げてしまう可能性を排除できた. さらに,平成17年度から本研究を始めた平成23年度入試入学者まで,修業年限内退学率に関する調査を行ったところ,AO入試と推薦入試Ⅰの入学者は,他の入試区分と比較しても有意差は認められなかった.しかし,平成17~20年度入試入学者において,修業年限以降も含めた退学率を調査したところ,AO入試入学者の12%が最終的に退学しており,他の入試区分よりも高かった.e-ラーニングを用いた入学前教育を開始したのが平成20年度入試入学者からのため,今後,退学者の減少が見られると入学前教育の効果を明らかにすることが可能である.
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