研究課題/領域番号 |
23501153
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
有馬 道久 香川大学, 大学本部, 理事 (10151185)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 授業リフレクション / 授業者視点映像 / 教師 |
研究概要 |
教師が自らの授業を振り返る(リフレクションする)ことは、教師の技能向上のためにも重要な行為であると言われている。本研究では、本年度、小学校の教師が自らの授業を振り返る際に参考とする映像の視点によって、リフレクションの内容がどのように異なるかについて検討することを目的とした。映像の視点は2種類あり、1つは参観者の視点から撮影した映像であった。この参観者視点条件では,教室の後ろから実験者がビデオカメラを持ち,できるだけ広範囲が映るように,そして授業者が映像の中心となるように授業を撮影録画した。もう1つの条件は、授業者の視点から撮影した映像であった。この授業者視点条件では、授業者の左耳の上に小型CCDカメラを着け,授業者の見ている光景を撮影録画した。そして、授業実施日の放課後に,録画された映像を再生,呈示しながら,授業者に自己リフレクションを求めた。その際,「誰を見ていたか、なぜ見ていたか,その時何を考えたか」など,映像を見ながら思い出したり,気づいたりしたことを逐一発言してもらい、録音した。香川県内の公立小学校の教師2名を授業者とし、2つの条件で各1回ずつ算数の授業の撮影とリフレクションを行った。ついで、発言内容を書き起こし,発言内容ごとに頻度や内容について分類した。合計頻度は参観者視点条件(126回)の方が授業者視点条件(117回)より多い傾向にあった。発言内容の分類カテゴリーは、「教材設定・教材解釈」「指導技術」「児童・生徒同士の学び合いへの支援」「児童理解」「授業展開」とした。また、授業者視点条件については、児童の発言と教師の視線の向きとの関連について、リフレクション内容と関連づけて分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
小学校教員に対して2種類の撮影条件下での授業とリフレクションを行ってもらうこと、ならびにリフレクションの内容を分析して、撮影条件の違いを検討するという方法論が妥当であることは2人の教師に適用して確認できた。しかし、当初の計画では算数と国語の各8授業について検討するという予定であったが、研究代表者が年度途中に職務が変更になり、新しい職務の遂行に時間を割かざるを得ず、研究時間の確保がきわめて困難であったため、計画したデータ収集ができなかった点で遅れを生じた。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度実施できなかった部分について追加でデータ収集を行う。 新たに授業者視点映像の特長を生かした対話リフレクションを継続的に実施することによって授業者の課題を発見し,その後の授業改善にどのような効果を及ぼすかについて検証するとともに,授業力向上に有効なリフレクションの方法を開発することを目的として検討を開始する。 方法としては、(1)同じ小学校に所属する若年教師とベテラン教師のペアを構成する。(2)セッション1として若年教師に算数もしくは国語の2回分の指導案を準備してもらう。(3)若年教師に指導案に基づいて1回目の授業を行ってもらう。その際,教師にヘッドセット・カメラを装着してもらい,授業者の視点から授業を撮影・録画する。(4)授業日の放課後,プロジェクターによって小型スクリーンに投影した授業者視点映像を手掛かりとして,授業者とペアを組むベテラン教師の2人で対話リフレクションを行う。(5)セッション2として、セッション1と同様の手続きで2回目の授業と対話リフレクションを行う。 上記の手続きで得られたデータについて、(1)リフレクションの観点ごとの頻度,記述量,記述内容などについて1回目の授業と2回目の授業を比較する。(2)セッション1で示された課題が2回目の授業でどのように改善されたかについて検証する。(3)授業力向上に有効なリフレクションの開発に向けて手続き・方法の改善を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、備品として、プロジェクター、スクリーン、消耗品として授業録画メディア用品(SDメモリーカード、フラッシュメモリー)と分析用ソフトウェア、ファイリングケース他を計上した。謝金等については、授業の撮影・録画の補助,録音した内容の逐語録の作成とパソコン入力に関わる謝金を計上した。そして、学会での研究成果発表と情報収集のための旅費を計上した。
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