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2011 年度 実施状況報告書

学習コミュニティのソーシャル・キャピタルに関する実証的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23501157
研究機関九州大学

研究代表者

多川 孝央  九州大学, 情報基盤研究開発センター, 助教 (70304764)

研究分担者 安武 公一  広島大学, 社会(科)学研究科, 講師 (80263664)
山川 修  福井県立大学, 学術教養センター, 教授 (90230325)
隅谷 孝洋  広島大学, 情報メディア教育研究センター, 准教授 (90231381)
井上 仁  九州大学, 情報基盤研究開発センター, 准教授 (70232551)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード学習コミュニティ / ネットワーク分析 / ソーシャル・キャピタル
研究概要

本研究の目的は、学習コミュニティにおいて学習者間の相互作用(つながり)が学習効果に及ぼす影響とそのメカニズムをソーシャル・キャピタル(社会関係資本)の観点からとらえ直し、実証的に解明することである。 研究計画の初年度である本年度は、実証的な解明のための準備として、実際に大学で運用されているソーシャルネットワークサービス(SNS)のデータの全体から、内部で行われるコミュニケーションを、利用者間の相互作用のグラフ(ネットワーク)構造として抽出した。 また、学習コミュニティが個々の学習者におよぼすと考えられる影響について考察し、これに基づき、学習コミュニティについての実証的分析のためにはSNS全体ではなく、全体のネットワーク構造の内部でより密接に結びついた部分ネットワークを分析の対象とするべきであるとの結論を得た。このような、内部で密接に結びついた小集団(コミュニティ)を内包するネットワーク構造は「コミュニティ構造」と呼ばれる。 抽出した大学SNS内の相互作用のネットワーク構造に対して、ネットワーク科学の分野で広く知られている数理的手法を用いて、密接に結びついたSNS利用者の集団=コミュニティの抽出を試みた。このコミュニティが時間の経過、すなわちネットワークの成長につれてどのように変化するかを可視化し、それと、ネットワーク構造の分析に広く使われる指標値の変化を組み合わせることにより、SNS全体の中で特徴的なコミュニケーションが行われている部分を検出し特定することが可能となった。このことは、個々の学習者の集団すなわち学習コミュニティにおけるコミュニケーションの実態と学習の成果がどのように結びつくかを比較・検討するための端緒となると期待できる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画初年度は、当初計画していた先行するソーシャル・キャピタル研究の整理ではなく、ソーシャル・キャピタル指標を適用するべきコミュニティについての検出手法の試行を行うこととなった。 これは、ネットワーク科学の分野で、大規模なネットワークからその内部のコミュニティ構造を抽出する研究が活発に行われており、その手法が本研究の分析対象である大学のSNSに対しても適用可能であることがわかったためである。 実際に大学のSNSに対してコミュニティの検出を行った成果として、時間の経過に対してSNSの内部のコミュニティがどのように変化するかを観察あるいは分析することが出来るようになった。ここで、ソーシャル・キャピタルは「信頼・絆・ネットワーク」などと呼ばれ、集団や共同体の潜在的な活力を示すものと考えられることから、ネットワークの中のコミュニティの成長・衰退の分析や観察を通じて、ソーシャル・キャピタルを計量化する方法を考察することが可能となると期待できる。これは、研究計画において第二年度目に予定していたソーシャル・キャピタル指標の提案の準備ともなっており、このため、研究計画全体の進捗度合いとしてはおおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

第一に、本研究において「学習コミュニティ」を観察する場である大学のSNSの上でソーシャル・キャピタルを測ることが出来る指標を、SNSの上のデータから得ることの出来るネットワークについての様々な指標値に基づいて定義する。ソーシャル・キャピタルの特徴として広く言われる「信頼・絆・ネットワーク」や「互酬性」にあたるものをSNSのログの分析から観察できる手段を構築する。 第二に、構築した(SNSにおける)ソーシャル・キャピタルの指標を、SNS内部のコミュニティ構造の時系列変化と照らし合わせ、これによりソーシャル・キャピタルとコミュニティの成長や衰退との関係について分析する。 第三に、個々の学習者をとりまくコミュニケーションをその学習者が参加する「学習コミュニティ」と再定義し、それぞれの学習コミュニティのソーシャル・キャピタルを計量し、それが時間の経過によってどのように変化するか分析を行う。個々の学習者にとっての学習コミュニティのソーシャル・キャピタルを、成績データ等から見た学習の成功や失敗、また、学習者が自分の学習のためにコミュニケーションを選択的に行なってゆく戦略の分析にも用いる。 平成24年度および25年度には、以上の方策を順次実行して研究を進める予定である。

次年度の研究費の使用計画

平成23年度には、上記「研究実績の概要」に記載した内容の一環として、学習コミュニティのネットワーク構造についての可視化・分析のためのツールの開発と、実際の分析を行った。この際、対象としていたSNSのデータのサイズが比較的小さく、また分析のプロセスも想定していたものよりも簡単なものであったため、研究代表者が既に保有していた計算機を使って開発・分析を行うことが出来、新規に計算機を購入する必要がなかった。この計算機購入に予定していた金額の一部は研究打ち合わせおよび研究発表のための旅費に使用した。 平成24年度には、大学で運営されているSNSについて、より長期間を対象とした大きなサイズのデータの分析を行う。このために、計算機が必要となり、前年度に残った金額の一部と合せ、高性能なものを購入する予定である。また、「今後の研究の推進方策」に記載した今年度の研究成果について、国内および海外で発表する予定であり、このために旅費等を支出する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Finding Characteristic Part of Interaction inside SNS As the Learning Community2012

    • 著者名/発表者名
      Tagawa, T., Yamakawa, O., Yasutake, K., Sumiya, T. & Inoue, H.
    • 雑誌名

      Proceedings of Society for Information Technology & Teacher Education International Conference 2012

      巻: 1 ページ: 3791,3795

    • 査読あり
  • [雑誌論文] COMBINING COMMUNITY DETECTION METHOD AND TEXT MINING TO INVESTIGATE THE INTERACTION INSIDE SNS AS LEARNING COMMUNITY2012

    • 著者名/発表者名
      Tagawa, T., Yamakawa, O., Yasutake, K., Sumiya, T. & Inoue, H.
    • 雑誌名

      Proceedings of IADIS. International Conference e-Society 2012

      巻: 1 ページ: 539,542

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Combining study of complex network and text mining analysis to understand growth mechanism of communities on SNS2011

    • 著者名/発表者名
      Osamu Yamakawa, Takahiro Tagawa, Hitoshi Inoue, Koichi Yasutake, Takahiro Sumiya
    • 雑誌名

      Proceedings of the 4th International Conference on Educational Data Mining

      巻: 1 ページ: 335,336

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ネットワーク・コミュニティを通した学習者間の相互作用とその効果に関するシミュレーション分析2011

    • 著者名/発表者名
      安武公一,山川修,多川孝央,隅谷孝洋,井上仁
    • 雑誌名

      教育システム情報学会誌

      巻: vol.28, No.1 ページ: 50,59

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 複雑系としての学習系( Learning Systems )に対するデザイン研究( Design-Based )アプローチの課題2011

    • 著者名/発表者名
      安武公一,山川修,多川孝央,隅谷孝洋,井上仁
    • 雑誌名

      日本教育工学会第27回全国大会講演論文集(課題研究)

      巻: 1 ページ: 63,66

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ログイン情報可視化の試み2011

    • 著者名/発表者名
      隅谷孝洋、稲垣知宏、長登康、中村純
    • 雑誌名

      大学ICT推進協議会 2011年度年次大会 論文集

      巻: 1 ページ: 343,346

  • [学会発表] 学習コミュニティの可視化について2011

    • 著者名/発表者名
      多川孝央
    • 学会等名
      シンポジウム「学習科学におけるLearning Analyticsアプローチ  ~学習履歴データから学習モデルを構築する~」(招待講演)
    • 発表場所
      AOSSA(アオッサ) (福井県福井市)
    • 年月日
      2011 – 1202
  • [学会発表] Positive Scienceとしての学習科学の可能性2011

    • 著者名/発表者名
      安武公一
    • 学会等名
      シンポジウム「学習科学におけるLearning Analyticsアプローチ  ~学習履歴データから学習モデルを構築する~」(招待講演)
    • 発表場所
      AOSSA(アオッサ) (福井県福井市)
    • 年月日
      2011 – 1202
  • [学会発表] 授業可視化プラットフォームVisPの開発2011

    • 著者名/発表者名
      隅谷孝洋
    • 学会等名
      シンポジウム「学習科学におけるLearning Analyticsアプローチ  ~学習履歴データから学習モデルを構築する~」(招待講演)
    • 発表場所
      AOSSA(アオッサ) (福井県福井市)
    • 年月日
      2011 – 1202
  • [学会発表] 複雑系学習科学から見たデザイン実験プローチの限界と課題2011

    • 著者名/発表者名
      安武公一
    • 学会等名
      プロジェクトX3シンポジウム「複雑系学習科学の構築に向けて」(招待講演)
    • 発表場所
      静岡大学
    • 年月日
      2011 – 0916

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公開日: 2013-07-10  

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