研究課題/領域番号 |
23501164
|
研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
澤井 高志 岩手医科大学, 医学部, 教授 (00125577)
|
研究分担者 |
佐藤 洋一 岩手医科大学, 医学部, 教授 (40118253)
三浦 康宏 岩手医科大学, 医学部, 助教 (40398483)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 遠隔教育 / バーチャルスライド |
研究概要 |
本研究の全体のテーマは、デジタル病理画像を利用した遠隔地医学教育実現のためのソフト、システムの開発であるが、大きく3つの項目に分けて開発を心掛けた。これによりパソコンを使ったデジタル画像による自己学習、遠隔地にいる大学院生、個々の研修医を対象とした遠隔講義 (1対1あるいは1対多数)さらに多地点の参加者による組織画像を利用したカンファランスなど様々な形での遠隔地教育が可能となる。自宅、あるいは自分の机でもIT機器の利用によって、遠方あるいは業務のために移動できない医師の教育が可能となり、作業の能率化を図ることができる。主目的はバーチャルスライドを利用した組織、病理組織の医学教育の応用システムの開発が目標であるため、その形式に応じての開発となる。(1)講師による遠隔講義、(2)自己学習、(3)多地点によるカンファランスが主目的であるため、それぞれの目的によって基本的なシステムが異なり、それに応じた形で機能を加える。(1)講師による遠隔講義の開発では、教官が1人、あるいは複数の受講者に画像をみながら疾患について説明する。この際、教官、受講者はインターネットを通して互いの顔を見ることが出来るため、教官は受講者の反応をみながら説明することが可能となる。これにあたっては、エムビジョンと開発中のweb画像病理閲覧システムを利用し、アノテーションやマーキングを可能とした。(2)自己学習においては、症例を中心に疾患を疫学、臨床面、病態、検査、画像(X線、CT、MRI)、治療的な面から捉え、疾患について画像を眺めながら総合的な学習を可能にした。病理画像は、アピリオのバーチャルスライドデータをZoomifyソフトで加工したものを利用し、学習ツールシステムを開発した。(3)は基本的に(1)のシステムを応用する形で検討したが、その他の方法として、同期表示が安定しているアドビ社のWEB会議システムでも同様に検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バーチャルスライド利用を中心とした病理画像による遠隔学習システムの開発が主目標である。(1)の教官による遠隔講義システムはZoomifyを利用したバーチャルスライドを中心に、教官側と生徒側での画像の共有が可能となり、相手の反応をみながら遠隔講義が可能となった。実証実験は簡単に1,2回しかおこなっていないため完成度は2~3割といった程度である。なお、バーチャルスライドだけでなく、パワーポイントを利用した講義に関しても利用を想定しており、現在開発中である。(2)バーチャルスライドを利用した自己学習システムの作成については、システムとしては既に実用化できる状態になっており、内容的には消化器系統で10症例、その他2例、その中で11症例が完成している。一症例に病因、疫学、病態、検査、治療の他に組織に関する正常組織、発生学に関する項目を加えているが、未だ全例の完成にはいたってないものの原型としては完成としており、コンテンツにあたる未完成部分の内容の充実が残されている。また、これを遠隔地にいる大学院生、研修医に利用してもらい、一層の充実を図る。完成度は8割である。(3)のカンファランスについては、基本的に診断でみられる難しい症例を複数の病理医でバーチャルスライドをみながら検討する。既に(1)のシステムを応用した形でアノテーション、マーキング、会話形式の機能が実用可能となっているため、この方法で専門家を交えた小人数で画像をみながら行うカンファランスを実施したい。またアドビ社の会議システムに関しては、何度か遠隔地を結んだWEB会議の実績があり、残された課題としてはこのシステムを実際の講義へ利用可能かの検証である。現在の達成度ほぼ6割程度にあたる。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)次年度の岩手医科大学の大学院講義に応用し、その結果について聞き取り調査を行いたい。岩手医大は社会人大学院制度を導入しており、大学院生が地方の病院で研修を行いながら、講義の日には岩手医大へ来る制度になっているが、このシステムが実用化すれば、わざわざ遠方から大学に来る必要はなく、自分の病院の自分の机で講義を受けることができる。なお、この方式は講義の人数を何人まで可能か、あるいはプロジェクター機能を付加して多人数を対象とした講義形式が可能かのどうかの確認についても行う予定である。(2)自学習は教材の内容を充実させて、プロトタイプとして完成する予定である。これをさらに多くの学生、あるいは大学院生に利用、評価してもらう。また、この方式の実用性を検討するために岩手医大だけではなく、弘前大学、信州大学でも検討してもらう予定である。(3)病理診断の難しい症例について、次年度から新たに研究分担者となる黒瀬(弘前大)、菅野(信州大)の両教授を対象としてバーチャルスライドをみながらのカンファランスを計画している。我が国に限らず病理医の少ない現状では、一人で診断、解決できる症例は限られており、専門分野も狭いので多くの病理医の意見をきくことが必要で、そのためにこのシステムを活用することは意義深いといえる。バーチャルスライドの開発と応用は、歴史的にみても顕微鏡の開発依頼の画期的なものであるため、利用の仕方によっては教育、研究、診断業務への一層の活用が期待される。したがって、これを利用して教育、研究、診断業務への応用を積極的に進めていきたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度はバーチャルスライドシステム機のスキャニング速度の低下や、操作PCのフリーズ状態が多発したことから、新しく操作PCを導入したため、作業効率が飛躍的に上がった。よって来年度は大きな機器購入の予定はないが、本システムで必要なソフト開発に関する費用やバーチャルスライド利用の研究業績を発表するための学会出張旅費や論文投稿費用などに使用する予定である。
|