研究課題/領域番号 |
23501164
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
澤井 高志 岩手医科大学, 医学部, 教授 (00125577)
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研究分担者 |
佐藤 洋一 岩手医科大学, 医学部, 教授 (40118253)
三浦 康宏 岩手医科大学, 医学部, 助教 (40398483)
菅野 祐幸 信州大学, 医学部, 教授 (40252663)
黒瀬 顕 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70244910)
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キーワード | 病理カンファランス / バーチャルスライド / WEB会議 |
研究概要 |
本研究のテーマは、医学、医療における組織学・病理組織学学習システムの開発である。本年度は学習システムの実用化を目標とした改良と検証を行った。 開発した内容は、バーチャルスライド(以下:VS)画像を簡易に組み込め、多地点でカンファランスが行えるシステムである。参加者は自宅または職場の個人用パソコンで参加ができ、それぞれVS画像を操作することが可能である。インターネット環境であれば、いつでも、どこでも利用することが可能である。また、この際のVS画像は「zoomify」形式を利用しているため、これに対応するVS画像であればメーカーを問わずに組み込むことができる。 このシステムの検証を行う目的で全3回のカンファランス実験を行った。第1回は岩手医大学の内丸キャンパスと矢巾キャンパス間、第2回は矢巾キャンパス間内、第3回は岩手医科大、弘前大、琉球大、である。参加地点の距離やログイン数を変えながら、システムの操作性、音声機能等を検証した。その後、2回の追加検証(岩手医大、信州大、弘前大、川崎医科大)を実施してこれを評価した。その結果、本システムのVSの画質は教育利用する上で問題なく使えることが明らかとなり、実用可能なシステムとして完成した。 近年、WEB会議システムを使った講義配信、オンライン会議などが学校や企業で多くみられるようになったが、このようなVS画像を組み入れたWEB会議を行っている事例は多くない。また、従来の病理カンファランスで使われている会議システムは高額であり、導入施設は限られていたため、参加者が実施会場まで足を運ばなくてはいけなかった。本システムはこうした問題を解決し、自宅の個人PCで手軽に病理カンファランスが行えるシステムである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はVS利用を目的としたシステム開発である。本年度に関しては、「病理カンファランスシステム」の開発を重点的に行い、来年度の実用化としての運用を残すのみで、達成度はおよそ8割といった程度である。具体的な改善を行った箇所は「レイアウト」と「機能全般」である。「レイアウト」はどのPCモニターのサイズを使用してもレイアウトが崩れないようにした。「機能全般」は、VS画像を操作できる「Master権」や、事前に見せたい画像を登録しておく「ビュー機能」、参加者が発言したい時の意思表示となる「発言ボタン」といった機能を改良した。もともとWEB会議システムは、参加者が多いほどサーバに負荷がかかるため、多くの機能をつけることは難しい。そのため機能は必要最低限のものだけにし、カメラ動画を静止画に切り替えるといった工夫を行ってシステムの安定性を図った。その結果、利用可能なシステムとして完成し、弘前大学、信州大学、川崎医科大学との最終検証を行い終了した。今後実用化する際の具体的な利用イメージは、「教官-学生」、「教官-少人数学生」などの遠隔グループ学習である。 昨年度に行った自己学習システムは、一症例に病因、疫学、病態、検査、治療を含めた総合的に学習できるシステムで、プロトタイプとしては既に完成している。遠隔講義システムについては、昨年度に「Adobe」社のWEB会議を実践的に用いて検証し、利用可能なシステムであることを明らかにした。しかしこのシステムにVS機能表示を付加すると、ブラウザ画面を同期表示する方式になるため画像の鮮明さを欠くことから、会議システムはパワーポイントファイルやPDFを使う利用方法のみに限定した。この「Adobe」社のシステムについては、達成度が10割と完結している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の一環である「VSを中心においた自己学習システム」は、11疾患に関する教材が完成している。しかし、本システムの利用想定の設定が厳しいことと、自学習でVSを利用する難しさがあることなどから、今後の課題として残し、システム開発や検証に関しては終了とする。代わりに、「病理カンファランスシステム」「遠隔講義」など、利用方法の検討が課題となる。 「病理カンファランスシステム」は、H24年度に開発したシステムを実際に利用する。「zoomify」データに対応した機種を複数取り入れ、利用可能かどうかを検証する。従来のVSを利用したソフトウェアは、メーカー毎に扱うため互換性がないものが多く、VS利用の促進を妨げる要因の一つといわれている。本検証を行うことでより普遍的な利用に拡大していくことがねらいである。 このシステムは少人数利用のシステムだが、設定次第ではスクリーンなどを用いて多人数向けとしても利用できるため、遠隔講義も可能となる。その有用性についても検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
システム開発は終了したため、次年度は学会参加費、論文投稿料、別刷印刷代といった研究の成果発表に利用する。また、遠隔カンファランス実験で必要な音声機器(ヘッドセット、WEBカメラ等)が不足した際は、その購入費用として利用する。
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