本研究の目的は、分散オブジェクトやオブジェクト共有空間等の高度なソフトウェア技術と、短距離無線通信やセンサ/アクチュエータを用いるフィジカルコンピューティング関連技術を、学習者が興味を持って修得できるようにするための、ソフトウェア開発および試行の支援と環境を提供することにある。 最終年度は、ソフトウェア事例開発をさらに推進し、国際会議で2件の論文を発表した。1つは、3台のAndroid(スマートフォン)が連携して、エレベータの籠の現在階を、リアルタイムに遠隔地でモニタリングするものである。さらに、気圧の他に、Androidに内蔵されている加速度センサを用いて、エレベータ籠の現在階を推定する方法も考案して実装した。これらの開発をとおして、センサ類をクラウド経由で活用する枠組みの典型例を示すことができたという意義がある。 3年の研究期間の1年目には、ZigBee準拠の短距離無線を装備する小型マシン多数を用いたネットワーク同期のための基本アプリケーションを開発した。これよって、分散アプリケーションに必須なマルチスレッドプログラミングの基本構造と無線信号による通信方法、LEDやサーボモータ等の制御方法等を切り出し、他のアプリケーションを開発する場合の基本要素として蓄えた。 2年目には、スマートフォン(Android端末)を利用して、約10個のアプリケーションを開発した。その過程で、学習者が今後活用すべきデバイス等の要素と、これら要素と外部システム(クラウド、web)との関係についての「クラウド/デバイスとモバイルアプリケーションの技術関係マップ」を作成した。全体を通して、センサボード、スマートフォンの機能と、クラウドデータベース(SQL型、key-value型、時系列データ型)を利用する分散アプリケーション開発の典型例を多数提示し、広範な応用開発のための基本的な枠組みを示すことができた。
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