研究課題/領域番号 |
23501182
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
坂本 將暢 愛知工業大学, 工学部, 講師 (20536487)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 授業研究および授業分析 / Lesson Study / 教師教育 / 教育工学 / キャリア教育 / 国際情報交流 / フィリピン / 韓国 |
研究概要 |
本年度は、本研究の目的のうち、授業の未経験者である学生が有する授業に対する視点の明確化と、教師が授業の中で直感的に行っている意思決定の明確化に取り組んだ。 前者の授業に対する視点の明確化では、教員になることを志望する学生を対象に、アンケート調査を実施した。アンケート調査の対象は、非教員養成の大学に通う4学年の学生218名に実施した。この調査対象の学生を、1年生と2年生のグループと、3年生と4年生のグループに分け、統計処理を行った。その結果、次のことが明らかになった。教職課程の授業を楽しむ(第1因子)、学外で学ぶ意味(第2因子)、学校訪問の重要性(第3因子)、教職課程の意義(第4因子)、そして学生による授業分析(第5因子)に分けることができた。第3因子に着目したとき、下位学年では、第4因子との相関が強いが、第1因子と第2因子とは相関が弱い。一方、上位学年では、第1因子と第2因子との相関が強いが、第4因子とは相関が弱い。また重回帰分析の結果、下位学年の学生は、教育現場に何かしらの幻想を持っているのに対して、授業分析や教育実習を経た上位学年は、教育現場を"現状"と捉え、そこから肯定的なことも否定的なことも学び、自らの授業観や生徒観、そして教育観を養っていることがわかった。 後者の教師が授業の中で直感的に行っている意思決定の明確化では、海外(フィリピン)の教育委員長と教育委員と教員を対象にインタビュー調査を行った。現在のところ、教師の専門職性、同僚性、そして自律性が日本の教師文化を支えていること、その支えは日本型の教師教育や授業研究が基盤にあることが明らかになっている。また、教育支援関係の事業における個人情報漏洩事件の発生についても調査した。これは、情報機器の導入が進み、これからの教員に求められる資質として、情報モラルも含まれると考えるからである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者がこれまでに開発したソフトウェアを用いた授業研究の実施は、計画通りには実施できなかった。その代わり、国内の教員や学生だけでなく、海外の教員、教育長、そして教育委員にインタビュー調査を実施することができた。この取り組みによって、教育現場での授業経験者と未経験者(学生)が有する授業に対する視点の違いを、日本の教師教育の基盤となっているであろう日本型の授業研究の特徴の解明という観点から明らかにすることができた。 上記のことは、教育学、とくに教師教育の理論生成を図る基盤になり得ると考えられる。つまり、本研究の目的の1つである「一般的に実践知と呼ばれるものを、理論知にして社会に還元する」を達成するための鍵であると考えられる。したがって、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、1)教員と学生を対象にした授業研究会を実施すること、2)その際に開発したソフトウェアを利用すること、3)国内外の教員、教育委員、そして教育長にインタビュー調査を実施することである。研究会の実施をとおして、教員や学生の授業や子どもに対する考え方などを明らかにする。ソフトウェアの利用は、実証評価だけでなく、ソフトウェアをとおして教員や学生の授業観の違いを明らかにする。そして、インタビュー調査をとおして、教師教育の国際比較研究を行い、日本の教師教育の特徴を明らかにする。 本研究に関して言えば、これまでのところ、国際学会への論文投稿を1件、国際学会での発表を2件、国内学会での発表を1件行っている。今後も、国際学会と国内学会への論文投稿、国際学会と国内学会での発表に取り組む予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、おもに、国内外での教師教育の調査(アンケート調査、インタビュー調査)のための旅費、国際学会と国内学会への参加のための旅費、授業研究会を実施するための運営費(謝金など)に使用する。
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