本年度は、当該研究の最終年度であるため、現役の教師、教師志望の学生、そして研究者の授業分析の観点の違いについて明らかにすることに努めた。そこで、夏期休業中の教師の学習会と、教員養成系と非教員養成系大学の教員志望の学生を集めた授業研究会および模擬授業で、授業分析を実施した。いずれの場合も、研究代表者が本研究の目的と意義を述べた後、参加者の了解を得て実施した。分析で用いた授業映像は同じものであり、分析前に参考に教示した分析方法は、SP表分析法、カテゴリ分析、発言表、ST分析法、分節わけである。 教師の学習会での分析視点の特徴は、教師の発問の仕方、子どもの特徴的な発言、授業全体の雰囲気であった。例えば、ST分析法を使って、傾斜が緩やかになっていることを呈示し、問題を解いている時間もあれば、何もしていない時間もあること、つまり、子どもたちの待ちの時間があることを明らかにした。また、教師の指示や確認の回数を数え、それが多すぎるのではないかという結論を出したり、授業最初は教師が主導的に授業をしている部分であり、生活指導をしている部分であることを明らかにしたりした。このように、授業改善を志向した視点で授業分析に望んでいることが明らかになった。 教員志望の学生の授業研究会などでの分析視点の特徴は、机間指導のパターン、教員の教え方のパターン、授業の展開のパターンであった。授業の極所に注目するというより、授業全体に視点が向いているように思われる。分析方法も、呈示したカテゴリ分析とST分析法、分節わけとカテゴリ分析、発言表とカテゴリ分析のように、複数の分析方法を組み合わせて授業分析に取り組んでいることが明らかになった。 これらの結果を海外の研究協力者とメールや国際学会等で、共有・意見交換をして、教師教育のあり方について、とくに日本の教師教育について検討した。
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