研究課題/領域番号 |
23501191
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研究機関 | 近畿大学九州短期大学 |
研究代表者 |
津森 伸一 近畿大学九州短期大学, 生活福祉情報科, 教授 (50342051)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 教育工学 / e-ラーニング / リメディアル教育 / キャリア支援 |
研究概要 |
本研究では,就職試験に多用されるSPI2検査問題を用いて,大学生の数学の基礎学力を向上することを狙った適応型eラーニングシステムの実現を目指す.平成23年度は,問題演習に用いるSPI2模擬問題の開発と個別指導を実現するための指導方略モデルの確立を図った. SPI2模擬問題については,SPI2の過去問題や模擬問題を分析した上で,頻出単元(19単元)の問題プール(約250問)を作成した.問題の解法に含まれる計算公式数を難易の基準と仮定し,難易度の異なる問題を作成した.更に,模擬問題をLMSの1つであるMoodleに実装し公開した. 学習者ごとの個別指導は,刻々と変化する学習者の理解状況を把握し,理解状況に応じた問題や助言を提供することにより実現される.そのため,学習者の単元ごとの理解度や問題プール中に存在する問題の難易度を定量化する必要があり,そのためのモデルを検討した.当初は学習者の答案作成過程の分析により理解度や難易度を計算するためのモデルを考案する予定だったが,精度の向上とモデルの学習内容に対する汎用性を考慮し,項目応答理論を応用することにした.具体的には,基準となる問題の難易度を項目応答理論を用いて求め,難易度が未知の問題については,解法に含まれる公式数を難易度既知の問題と比較することにより,難易度の序列を決定する.これにより,全ての問題を難易度別にレベル分けすることができる.また,学習者の問題に対する正答確率を予測することにより,単元別に学習者の理解状況に応じた問題を出題することができる.以上のように,適応型eラーニングシステムの実現に必要なモデルを確立した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究内容として,(1)SPI2模擬問題の開発,(2)学習者の理解状況のモデル化,(3)教授モデルの作成を計画した. (1)については,SPI2検査において出題頻度の高い19単元を選択し,約250題のオリジナル問題を開発した.SPI2検査に出題される単元が年々増加する傾向にあるため,今後も問題を追加する必要はあるものの,代表的な問題についてはほぼ実装済みであり,当初の計画通りに進んだ.(2)については,当初はSPI2模擬問題の答案分析を行うことによる理解度のモデル化を予定していたが,より精度の高いモデル化のため,項目応答理論を応用したモデル化の方法を検討した.適応型システムを実現するに足るモデルが確立でき,当初の目的が達成できた.(3)については,(2)の過程で得られる学習者の理解度や問題の難易度の情報を用いて,学習者の理解状況に応じた問題を出題する指導方略モデルを確立できた. 以上のように,SPI2模擬問題の問題プール,適応型eラーニングシステムの構築に必要な数理モデルの確立ともに,ほぼ当初の計画通り進展している.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,平成23年度に検討した学習者の理解状況や指導方略のモデルを実システムに実装することにより,適応型eラーニングシステムを構築する.方法として,(1)Moodleの利用を前提としたモジュールの開発,(2)独自プログラムの開発の2つを検討してきたが,Moodleの頻繁な仕様変更の影響を考慮し(2)の方法を採る予定である.具体的にはPHP(プログラミング言語)とMySQL(データベース管理システム)を用いた実装を行い,試験公開を行う予定である.更に,SPI2試験についても,実際の試験が出題する新傾向問題に対応すべく問題プールの追加を行う予定である.平成25年度は,平成24年度に開発したシステムについて,指導方略や問題の難易度の妥当性,システムによる学習効果やキャリア支援への有用性などの観点から有効性の検証と改善を行い,完成システムを公開する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に,SPI2模擬問題作成のための画像処理ソフトウェアの費用を計上していたが,作成する画像の見直しのためソフトウェアの購入に至らず,結果として次年度使用額が生じた.画像処理ソフトウェアは平成24年度に購入予定である.また,平成24年度の直接経費(50万)については,学会・研究会の参加費用(20万),研究成果投稿料(10万),プリンタトナーなどの消耗品費(20万)として使用する予定である.
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