パターン認識システムは,文字認識に始まり音声認識やバイオメトリックスに関する様々な分類システムが構築されているが,これらのシステムにおいては,どのようなシステムも高次元のパターン空間に,測定もしくは採取したパターンが分布している。サンプルパターンが分布している空間は一般的に次元数の高い多次元空間であり,これらのパターンの分布状態を可視化できる簡便なツールは存在しなかった。情報科学を学ぶ学習者にとって,これらの多次元空間におけるパターンの分布を,わかりやすく可視化するとともに,多次元空間における距離の測定原理をWebページなどを介して,広く公開し,簡単に実験を体験できる「パターンの多次元分布を可視化する理解促進教育用文字認識システム」を開発することが本研究の目的である。 データの収集・解析の後,多変量解析の主成分分析の手法を用い,多次元分布の次元圧縮を試み,パターンの多次元分布を可視化する数字認識システムを完成した。タブレットも用いたシステムでは,指を用いて自然な感覚で文字入力できるシステムを構築した。またWebページにて,日本語,英語のシステムを構築し外部公開した。ただし,多次元分布の可視化システムはシステムのサイズが過大となったため,自組織でのWeb閲覧はできるものの,外部組織での動作は待ち時間が大きくなり過ぎて実用的な使用には耐えられなかった。このため,システムを二種類に分け,利用者の便をはかるようにした。 システムの性能評価は,講義や実験を通じ学習者の学習効果を測定し,ほぼ所期の目的が達成できた。それらの実験結果等を含め,パターンの多次元分布を可視化する数字認識システムを持参し,その成果を米国ラスベガスにて開催されたHCI2014国際会議を始め,全国高専教育フォーラム等を通じ,デモ動作を含めた報告をし,研究成果を広くPRした。
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