研究課題
最終年度はタンパク3000に関係した最重要リーダーを含む関係者へのインタヴュと、海外学術誌等による、この時期前後の構造ゲノム関係の動向について資料を集め、総括的な分析を行った。このプロジェクトの立ち上げにまつわる顕著な特徴は、これがNMRを中心とした国際的な公開施設の設置という初期のプランから、制度的、政治的、さらに国際関係的な諸要因に基づく、かなり予測困難な紆余曲折によって、特定の数値目的を持った国家的プロジェクトへと急激に変容したため、一部の関係者の間にある種の混乱と反目が生じたことと、さらにこのプロジェクトの公的なテーマである、構造ゲノム、すなわちタンパク質の基本構造の網羅的解析、という発想自体が、議論の余地を残すものであり、それが後にこのプロジェクトの評価をめぐって、激しい賛否両論が戦わされる原因となったことが判明した。その背後には、ゲノム研究に代表されるような、生命科学に対する情報論的なアプローチと、それに対するいわばウェット系の研究者のある種の構造的な反目が存在しており、それはゲノム研究よりも、タンパク質立体構造研究といった分野で、特に顕著に現れうる特質である。こうした潜在的な対立は日本に限らないが、しかしこの両者がある意味すみわけをしているアメリカのようなケースと比べて、このプロジェクトではこれが同居しており、それがこのプロジェクトの性格を理解しにくいものとしている。さらに、今後ライフサイエンスにおける情報論的アプローチは近年のビックデータ化の兆候にもあるように、急激にその影響力を増しているが、その背後には、こうした根強い対立の可能性も、バイオインフォマティクスといった領域の今後の困難もここからうかがえるのである。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
East Asian Science, Technology and Society
巻: 7(1) ページ: 7-33
10.1215/18752160-2074955
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