本研究は、「タンパク3000」プロジェクト(2012-2017)を中心として、ポストゲノム時代の政策の形成と、その実施のあり方を科学社会学・人類学の観点から実証的に明らかにした.このプロジェクトは、タンパク質の基本構造を国際的な協働により解明しようとしたものであったが、その数値目標の達成にもかかわらず、計画終了後に多くの批判、論争を生んだ. 本研究では、こうした論争の背景に、タンパク質構造研究をめぐるアプローチの違いによる研究者集団間の競争、省庁間の対立、さらにゲノム研究以降の国際競争の激化、といった諸要因が複雑に絡み合って、結果として異例の批判の応酬となった過程を詳細に分析した.
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