研究課題/領域番号 |
23501200
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
隠岐 さや香 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (60536879)
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研究分担者 |
野澤 聡 東京工業大学, 世界文明センター, フェロー (30599741)
小林 学 東京工業大学, 社会理工学研究科, 特別研究員 (60447555)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / フランス / スイス / イギリス / オランダ / 数理科学史 / 技術史 / 力学史 |
研究概要 |
科学者集団が、土木建築、軍事、産業に関わる職人層・技師などとの間に役割分担を進めていく社会的な過程を検討するため、(1)学者の協会・アカデミー制度の確立が起きた1660年代頃-1740年代頃(野澤)、(2)協会・アカデミー制度の権威化と国家による技術官僚機構の整備が進んだ1740年代頃から1780年代頃(隠岐)、(3)産業革命と結びついた民間技術者の台頭とそれに呼応した科学諸分野の発展をみた1780年代頃から1840年代頃まで(小林)の三つの時期について、分担者が一人ずつ担当し、研究を行った。まず、方法論的アプローチの共有のため、2012年5月29日に日本科学史学会にてシンポジウム「物質・技術文化からみた近代数理諸科学の展開」を企画・開催した。このアプローチが科学史と技術史を越境した形での歴史記述を可能にすることが、各時代の事例を通じて確認された。2011年10月には「物質・技術文化」概念とそれぞれの科学史・技術史的アプローチの関わりを検討する研究会を開催した。その際に十九世紀の電磁気学史を専門とする金沢工業大学の夏目賢一氏を招いて意見交換を行った。「流体」のメタファーをキーワードにすることで、電磁気学史、水力学史、熱力学史それぞれの分野における理論とモノの関係の特徴が抽出できるかもしれないとの視点が提示された。国内において入手困難な資料が多くあっため、2012年2月に研究協力者の但馬亨氏(龍谷大学他非常勤講師)を軍事技術史・数学史関連資料の収集に派遣した。隠岐と小林は国内での文献収集に当たった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本科学史学会での合同シンポジウム企画、秋の研究会、研究協力者の派遣など、当初予定されていた計画が無事推遂行され、プロジェクトの一年目として必要な方法論的議論と情報の共有が達成された。ただし2011年度は科学研究費の3割分の交付について年度後半まで不透明な状況が続いたため、当初予定されていた年度末の研究会と出張の一部が2012年度に繰り越されることとなった。共に実現のためには夏頃からの準備が必要な企画であったが、予算の見通しが立たない中ではそれが困難と判断し、開催を見送ったのである。この点を除けば、全体としては順調な進展であったため、評価は「おおむね順調」とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の成果を整理しながら、研究代表者、研究分担者、研究協力者を現時に派遣し、更なる研究資料の収集に当たらせる。課題の分担体制は平成23年度に準ずる。小林は渡英し、John Smeatonの図面を所蔵するロンドン王立協会をはじめ、 ICE, IMechEなどを訪問し、資料収集および実験器具、機器・機械などの調査を行う。隠岐はフランスで土木学校(ENPC)古文書館と科学アカデミー文書館を中心に土木公共事業に関する資料収集を行う。研究協力者の中澤がオランダのアムステルダムで18世紀の河川整備と流体力学の理論形成に関連した資料収集と実験器具調査を行う。また、野澤は力学の理論史関連資料(力学形成史に不可欠なベルヌーイ一族の手稿)収集と現地の研究者からの専門的な情報収集のため昨年度実施予定であったスイス訪問を実現する。但馬は前年度に収集した資料の整理、分析と同時に国内で資料調査を行い、必要であれば国外出張も行う。また、この年度より成果発表作業を本格化させる。秋期にゲスト講演者を招聘した公開研究会を東京で開催し、その結果から適宜論文もしくは研究ノートをまとめる。投稿誌は日本科学史学会誌のHistoria Scientiarumなどを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末に開催予定であった研究会を夏か初秋に実施し、謝金と旅行費を使用する。連続的に、11月頃にも同様に研究会企画を行う。また、昨年度野澤氏により実施される予定であった国外出張を実施する。その他は上の推進方策に示した通りである。
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