研究課題/領域番号 |
23501205
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
田口 直樹 大阪市立大学, 経営学研究科, 教授 (60303252)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際分業 / 技術移転 / 基盤的技術 / 技術形成 / 中国 |
研究概要 |
本研究はアジアにおける基盤技術の形成に関する国際比較を行うことを目的にしている。研究の狙いは、ものづくりのアジア化が進展する中で、アジア間における製造業の国際分業の在り方を検討するために、アジア各国の基盤技術の形成過程を分析することにより、いかに各国が比較優位を維持しながら技術分業を達成するかを明らかにすることにある。 本年度は、特に工業発展の著しい、中国について重点的に調査研究を行った。この調査においては、発展の著しい沿海部、特に上海・蘇州地域の機械工業の実態と、今後発展の見込まれる内陸地域、四川・重慶地域の機械工業の実態を二度に渡る調査で行った。 ここで得られた知見は、沿海部地域においては人件費の上昇が年率20%と大きく、この地域ではもはや人海戦術という形態ではものづくりが困難になっており、省力化機械・合理化機械の供給が非常に求められているという実態がある。一方、内陸地域においては、徐々にインフラが整ってきた段階であり、基盤工業がまだ充分に整っていない現状があることが明らかになった。しかし、沿海部の飽和的実態から今後、内陸地域への製造基盤の移管が予測される中で、内陸と沿海部の間の分業関係の在り方が中国における工業発展の課題となっている。 こうした観点から日本の製造技術を見た時、沿海部における省力化技術を含む製造ラインの技術を供給することが求められており、内陸部においては基盤技術の供給が求められているということが出来る。実際に、こうした点を見越して現地に進出している日本企業も数多く存在している。今後、日本の得意とするプラント技術(先端の技術と従来型の基礎的汎用的技術)を如何に中国に移管させるかが日本と中国のものづくりにおける分業関係を考察する上で、重要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は国際比較研究を目的としているので、海外調査が主となる。本年度は当初計画としては、タイの機械工業の実態を調査予定であったが、2011年末におこったタイの水害の影響でタイ調査を断念せざるを得なかった。この点では、調査は予定通りに進んでいないが、中国調査を二度行うことにより、中国における機械工業の実態をより深く認識することが出来た。また、研究分担者として参加している他の科学研究費プロジェクトにおいて韓国の生産システムに関する調査にも参加したことから、韓国における機械工業の実態についても調査することも出来、国際比較研究という観点から見た時、おおむね順調に知見は得られていると考える。 また、アジア経済、技術形成に関する文献資料等についても予定通り収集が出来、実態調査以外の文献資料等についても当初目的通りである。 以上の研究経緯より、本プロジェクトはおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度は2011年度ど同様、海外におけるものづくり実態調査、国内におけるものづくり実態調査、アジア経済、技術移転に関連する調査文献資料の収集・分析を中心に行う。(1)海外調査:調査のベースとなる中国における基盤技術形成の実態調査を引き続き行うとともに、2011年度に行うことの出来なかったタイにおけるものづくり実態調査を行う。(2)国内調査:本年度は国内のものづくり実態調査を行う。とりわけ、韓国と協力関係を推進している北九州地域におけるものづくり実態調査を中心的に行うことにより、アジアにおける国際分業の実態について調査を行う。(3)資料・文献調査:2011年度同様、アジア経済、技術移転に関する調査資料・文献の収集に務める。また、昨今、TPPに関する議論などアジアにおける自由貿易に関する議論が盛んであるが、アジアにおける貿易の実態について調査することにより、アジアにおける自由貿易と国際分業に関する是非について検討できる資料を収集する。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012年度は、2011年度同様、海外調査旅費、国内調査旅費およびアジア経済、技術移転に関する調査資料・文献の収集費用への支出が中心となる。 尚、2011年度の研究費で約29万円を2012年度に繰り越している。これは、2011年度に行う予定であったタイ調査を2012年度に行うことと、FOURIN、IRCなど、個別企業の海外戦略等のデータベースをまとめて購入するために繰り越した。 2012年度は2011年度から繰り越した研究費を含めて、上記研究の推進方策に従って支出していく予定である。
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