本研究で取り上げた16世紀の数学論は,従来の科学史研究においては16,17世紀の科学革命との関連でのみ捉えられてきた.しかし,こうした見方は,古代から哲学の一分野として数学論の伝統が続いていたという事実,また自然科学と学問論の違いを無視するものである.本研究では,こうした見方の限界を克服し,16世紀の数学論をその学問論的コンテキストの中で捉え,当時の批判的な知の営みに一層の光を当てようと試みた.そうした関心から,M. A. ツィマラや A. ピッコローミニといった16世紀の著作家達を,学問論の伝統的論題との関連で検討した.
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