研究課題/領域番号 |
23501210
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
溝口 元 立正大学, 社会福祉学部, 教授 (80174051)
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キーワード | スミソニアン博物館 / 台北帝国大学 / 日本動物学史 / 科学技術史 |
研究概要 |
研究計画調書「研究計画・方法(概要)」欄の平成24年度に記述した通り、平成24年8月にアメリカの首都ワシントンを訪れ、スミソニアン協会アーカイブ及び博物館倉庫において研究調査を行った。そして、この倉庫に所蔵されている学芸員スタイネガーが20世紀初頭に我が国で採集した両生爬虫類の液浸標本の現物を実見し、撮影が許可された14サンプルに関して画像で記録した。これについては、平成24年9月に開催された日本動物学会第83回で日本の動物学史におけるスタイネガーの活動の位置付けて報告した。平成25年5月の日本科学史学会第60回年会でも標本の実際について発表する予定である。 また、平成23年度に実施を予定していたが、補助金分割交付の時期、金額決定の遅れにより、翌年にそれを延期した台湾・台北市の国立台湾大学(旧台北帝国大学)動物学研究所に対しても平成24年10月に調査研究を行った。保存されていた日本人研究者青木文一郎が現地での協力を得て採集した台湾産のネズミを中心とする剥製標本を実見することができた。日本人動物学者の活動については平成24年10月に台北市で開催された「アジア・太平洋発生生物学会議」において報告した。また、青木については平成25年9月に行われる日本動物学会で成果報告する予定である。これらの標本は、リアルな動物遺体を学術的に保存しているもので、研究者はもとより関心がある一般の方や学生などには公開しても全く問題はないと思われる。しかし、児童や一般の方でも中には不快感を抱く可能性も考えられるので、ウエッブ上での公開については、どこまで可能かについて各方面の方の意見を聴取しているところである。 明治中期から昭和初頭までの学術雑誌の記事に関しては、「朝鮮博物学会誌」等の調査を進めた。京城帝国大学予科の森為三が朝鮮半島の天然記念物選定に大きく関与していることを窺わせる資料を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書の「研究計画・方法(概要)」の平成24年度欄に記述した通り、アメリカの首都ワシントンに所在するスミソニアン博物館倉庫に所蔵されている学芸員スタイネガーが20世紀初頭に我が国で採集した両生爬虫類の液浸標本の現物を実見し、許可された14サンプルに関しては画像で記録した。 また、平成23年度の欄に記していたが、補助金分割交付の時期、金額の決定の遅れにより、実施を平成24年度に延期した台湾・台北市の国立台湾大学(旧台北帝国大学)動物学研究所に保管されていた日本人動物学者青木文一郎らが現地の協力を得て採集した台湾産のネズミを中心とする剥製標本も実見し、画像記録に残すことができた。 さらに、明治初頭から戦前期における日本人動物学者の活動に関しては台北市で開催された国際会議である「アジア・太平洋発生生物学会議」において報告した。このように海外研究機関における動物標本の調査・研究に関しては研究計画調書に記載した通りに実施できたので、研究目的に向かっておおむね順調に進展していると判断する。 なお、これらの標本は、リアルな動物遺体を学術的に保存しているもので、研究者はもとより関心がある一般の方や学生などには公開を許可されたものに対してウエッブ上等で公開してもまったく問題はないと思われる。しかし、児童や一般の方でも不快感を抱く方が存在する可能性も考えられるので、電子媒体での公開については、どこまで可能かに関して各方面の方の意見を聴取しているところである。これも研究計画調書の平成24年度の箇所に記入した内容に沿ったものである。 最後に、明治中期から昭和初頭までの学術雑誌等の記事に関しては、「朝鮮博物学会誌」に関しても調査を進めた。朝鮮半島における天然記念物の選定過程を文献から浮き彫りにする準備がほぼ整ってきているので、文献研究もおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、研究計画調書の「研究計画・方法(概要)」の「平成25年度」に記したように「国際科学史会議等における成果報告」並びに「意見聴取および報告書の作成」に取り組んでいく。さらに、これまでの2年間の研究での遺漏や不明であった点を補充しつつ、情報発信に力を入れたいと考えている。 「国際科学史会議等における成果報告」については、平成25年7月にイギリス・マンチェスター大学を中心に開催される国際会議において成果を報告の申請したところ、発表を採択する旨の連絡をすでに受けている。題名はInfluence on Japanese Zoology of Foreign Zoologists who Visited Japan before World War IIである。そのための準備として、これまでの文献研究から明治初頭までの本草学、博物誌的文脈での動物観、西欧近代動物学導入によるその変容、これらを担った人物の活動調査等を整理する。 そして、まず、平成25年5月に日本大学で開催される日本科学史学会第60回年会において「スミソニアン博物館蔵スタイネガー採集日本産両生爬虫類液浸標本」と題して発表する。また、国際会議での成果を取り込み、9月に岡山大学で行われる日本動物学会第84回大会で報告する予定である。ここでは、同学会の「歴史資料保存委員会」と情報交換を密にして、日本における近代西欧動物学が導入されたことによる日本人の動物観の変遷を具体的に呈示していきたい。各学会、会議の度に、外国人を含む研究者からレヴューを含む情報交換を行い、本研究の成果を充実させた報告書を作成していく。 その際、サイエンスコミュニケーションやひらめき・ときめきサイエンスの動向を勘案した内容も念頭に置くつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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