研究計画に従って、まず、日本における動物「種」の認識として、江戸期までの本草書及び明治期以降の学術雑誌、図書から「ウニ」、「カエル」、「エビ」等の種類の記載の増加状況及び図譜の様子を整理した。次に、20世紀初頭、我が国に来日し、日本人動物学者の協力を得て、日本産両生爬虫類を採集、鑑別・分類、新種としての記載等を行ったアメリカ・スミソニアン(国立)自然史博物館学芸員であったスタイネガー(1851-1943)の活動に注目した。そして、同国首都ワシントン郊外に所在するスミソニアン・ストックセンターにおいてスタイネガーが日本で採集し、持ち帰った両生爬虫類の液浸標本を実見することができたため、許可された範囲で種名、採集記録の調査を行った。さらに、台湾に国立台湾大学として現存する旧台北帝国大学理農学部の動物分類学者、青木文一郎(1888-1954)が教室員とともに台湾の台北市、阿里山、淡水地区を中心に採集したネズミ科の剥製標本が現存していることを確認し、許可された範囲で種別個体数の計数調査を行った。彼は、台湾における天然記念物の選定にも尽力した人物であり、同じく日本統治下にあった韓国・ソウルの旧京城帝国大学予科の動物学者森為三(1884-1962)の場合と比較した。森も朝鮮総督府における天然記念物選定に深く関与し、珍土犬を推奨した人物としてもで知られる。こうした成果は2013年7月、イギリス・マンチェスターで開催された第24回国際科学史技術史医学史会議で報告した。2013年10月には社会的事件として比較的安価な輸入エビを国産の高価なエビと偽ってレストランで提供していたことが明るみに出た。エビに関する本草書、動物学書の記載と水産物取扱業者の呼称、動物「種」の認識との関係を探究した。これらを含め156頁の冊子媒体の印刷・製本された報告書としてまとめた。
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