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2012 年度 実施状況報告書

戦後日本の科学界における素粒子論グループ・基礎物理学研究所の役割に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23501212
研究機関龍谷大学

研究代表者

小長谷 大介  龍谷大学, 経営学部, 准教授 (70331999)

キーワード素粒子論グループ / 湯川記念館 / 基礎物理学研究所 / 三村剛昂 / 理論物理学研究所 / 広島大学 / 波動幾何学 / 戦後日本
研究概要

本研究は、素粒子論グループ(以下、素論G)と彼らの活動と深い関係をもつ京都大学基礎物理学研究所(以下、基研)を、歴史的に調査、分析し、戦後日本の物理学界の発展との関係、さらに日本科学界全体に与えた影響を明らかにするものである。
この研究の目的に照らし、平成24年度では、『素粒子論グループ事務局報』への調査、基研の元所長や関係者へのインタビューを実施する予定であったが、基研の地下室に収められていた広島大学理論物理学研究所(以下、理論研:1944年設立、1990年基研と合併)の関連資料を見出し、それに関する調査、分析を主に進めることになった。
理論研設立の中心人物となったのは理論研初代所長の三村剛昂(1898-1965)である。彼は、戦前から戦後にかけて素論Gと交わり、湯川秀樹のノーベル章受賞後に湯川記念館が設立される過程や湯川記念館および初期の基研の運営において大きな役割を担った(『基研案内』(1958年)、小林稔の発言(『自然』1957年1月号、38頁))。さらに、素論Gや基研への重要な系譜となった「組織の芽」には、理化学研究所の仁科芳雄研究室を中心に活動していた「中間子討論会」だけでなく、三村を中心とする学術研究会議の「基礎理論班」も加えられている(『基研案内』、16頁)。こうした点から、素論Gから基研設立への流れにとって、三村と理論研関係者は脇役ではなく、主な源泉の一つとみなすのが適当だろう。
本年度の研究では、仁科、湯川、朝永、坂田らの系譜を素論Gから基研設立への唯一の大きな流れと考えるのではなく、三村らの動向も重要な系譜として位置づけるための分析の準備作業を行った。その成果の一部は、日本物理学会第68回年次大会(2013年3月)での三村に関する展示パネル内容によって示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の研究計画では、平成24年度の実施内容は、(1)基研の歴代所長へのインタビュー、(2)湯川記念館史料室・坂田記念史料室・朝永記念室の所蔵史料の把握と当該史料の精査、(3)『素粒子論グループ事務局報』の内容調査、(4)湯川記念館・基研の関係者へのインタビューという4点を主としていたが、「研究実績の概要」で記したように、基研の地下室に収められていた広島大学理論物理学研究所(以下、理論研)の関連資料を見出したことを受けて、それに関する調査、分析を主な実施内容とした。
だが、当初の計画内容がまったく行われなかったわけではない。(2)に該当する坂田記念史料室の訪問とその史料精査、(4)に該当する関係者の一人山口嘉夫氏へのインタビューは実施され、とくに(2)の精査の成果は、日本物理学会第68回年次大会での「三村剛昂と広大理論物理学研究所展」において活用された。以上のことから、平成24年度の研究達成度は、当初の計画内容からすると、十分に実施されたとは言えないため、「やや遅れている」と評価した。

今後の研究の推進方策

本研究の実施項目4点のうち、決定的に遅れている項目は基研歴代所長へのインタビューである。第3代所長・佐藤文隆氏へのインタビューのみが行われたにとどまっているので、佐藤氏に加え、他の歴代所長へのインタビューを行う。また、平成24年度に研究内容に加わった三村剛昂と広大理論研に関する史料の調査および分析は発展途上であるが、その分析結果を戦後日本の物理学界の発展にどう関係づけできるかを精緻に考えながら、研究を進めていく。さらに、平成24年度では、学会での報告、出版物による報告などが不十分であったため、日本物理学会第68回年次大会での「三村剛昂と広大理論物理学研究所展」に関する報告に加え、現時点での分析結果の公表を、日本物理学会誌や日本科学史学会誌で早急に行う。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度からの継続研究として、京都大湯川記念館所蔵の湯川関連史料の調査、基研関連史料の調査、名古屋大の坂田記念史料室・筑波大の朝永記念室所蔵の関連史料への調査を行い、加えて、素粒子論グループの三村剛昂に関連して、仁科記念財団と理化学研究所記念史料室に収められている仁科芳雄関連史料も調査対象にする予定である。したがって、これらにかかる交通費や諸経費を計上する。
また、平成24年度の残された課題に関連して、基研の歴代所長へのインタビューを実施する。すでに物故されている歴代所長を除き、第3代所長の佐藤文隆氏、第6代所長の長岡洋介氏、第7代所長の益川敏英氏、第8代所長の九後太一氏をその対象とする。ただし、インタビュー実施には準備を含めて大きな時間を要するため、平成25年度については、佐藤氏への補足インタビュー、長岡氏もしくは九後氏のどちらかへのインタビューを行う。これらのインタビューの実施に際して、当該者への謝礼、交通費、実施のための諸経費を計上する。
さらに、平成24年度に行った調査・分析の成果、そして平成25年度に行う調査・分析の成果を報告するために、2013年7月にマンチェスターで開催される国際科学史技術史会議、2013年9月に高知大で開催される日本物理学会秋季大会、2014年3月に東海大で開催される日本物理学会第69回年次大会に参加する予定である。したがって、これらにかかる交通費や諸経費を計上する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] 熱輻射実験と量子概念の誕生

    • 著者名/発表者名
      小長谷大介
    • 学会等名
      日本科学史学会 科学史学校
    • 発表場所
      日本大学理工学部駿河台校舎
    • 招待講演
  • [学会発表] 湯川と朝永:戦後日本の理論物理学研究における二人の役割

    • 著者名/発表者名
      小長谷大介
    • 学会等名
      20世紀科学史研究会
    • 発表場所
      日本大学理工学部駿河台校舎

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公開日: 2014-07-24  

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