研究課題/領域番号 |
23501215
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
安部 みき子 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80212554)
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研究分担者 |
長岡 朋人 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (20360216)
澤田 純明 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (10374943)
奈良 貴史 日本歯科大学, 歯学部, 准教授 (30271894)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 幼小児骨 / 骨考古学 / 古病理学 |
研究概要 |
研究の目的:、乳幼児人骨は骨化が進んでいないため成人骨より脆弱で遺存率が低く、かつ、骨端などの形態も未熟であるため、古人骨の研究分野から注目されていなかった。しかし、古代人の生活史を解き明かすためには胎児を含む乳幼児の死亡パターンを推定し、遺跡の背景を知ることが重要である。本研究は、出土した人骨を形態学だけではなく古人口学や古病理学等からの視点で分析し、生物考古学の確立を目指している。今回は、江戸時代の寺院墓地の一角の「子墓」といわれている墓域から出土した乳幼児人骨を資料とし、他の地域の子墓の乳幼児人骨との比較を行うことに重点を置いている。今年度の実績は、愛知県東海市長光寺墓地出土の乳幼児人骨約300体のうち約30体の整理を行った。この資料は数年前から整理を始めており、現在では資料全体の約2/3の整理は終わっている。 研究実施計画:本研究にもちいる長光寺出土の乳幼児人骨は、発掘時に骨の周囲の土壌とともに取り上げられ、1つのコンテナに複数個体が入れられているものである。そのため、最初に各個体の整理とクリーニング、保存処理を行う必要がある。その後、遺存部位の記載、骨計測、古病理学的検討、同位体食性分析のなどを行う予定である。 また、乳幼児の年齢推定法は確立されていないため、既知年齢の人骨をもとに年齢推定法を作成する必要がある。そこで、既知年齢の乳幼児人骨を保有している施設に資料の提供を依頼している。 先行研究として、江戸時代の大阪府堺市の喜運寺の「子墓」から出土した乳幼児人骨をもちいて、遺存率が高く、骨計測が容易で、計測値の誤差が少ない部位を選択し、死亡年齢を推測した。今後、この推定法と既知年齢からの方法との整合性を検討し、より正確な推定法を確立したのち、長光寺の乳幼児人骨の死亡年齢を推定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の主な資料である愛知県東海市の長光寺墓地から出土した乳幼児人骨は300体以上を数える。乳幼児人骨は遺跡での保存状態が悪いことが多いが、長光寺乳幼児人骨は比較的良好である。しかし、発掘されてからクリーニングをされずに数十年が経過しているため、発掘時より脆くなっており、扱いに慎重さを必要とする。これらの人骨は東海市教育委員会の倉庫に保管されており、取り上げ時の土を除去しなければ研究室に搬入できない状況にある。したがって、搬入の準備を行うために土の除去作業と各個体の整理が優先である。しかし、資料数が多いうえに、現地に赴かなければ整理ができないため、作業期間が限られる。このことが作業効率を悪くし、遅れの最も大きな原因となっている。 さらに、歯はエナメル質が小片となって剥がれ落ちているものが多く、土の除去作業時に、歯の保存処理と復元を同時に進行しなければならない。そのため、時間の多くをこの作業に割かなければならない。この点も遅れの原因の一つとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
乳幼児の骨から年齢を推定する方法を確立するために、既知の骨格標本のある東北大学や東京大学の資料調査を行い、特定の骨の形態的特徴と年齢の関係を明らかにする。 長光寺墓地出土の幼小児人骨のクリーニングと保存処理を急ぐことは言うまでもない。保存処理が完了すると、遺存状況、年齢の推定、体格の推定などの基礎資料を収集する。年齢の推定には、先に本研究で確立した乳幼児人骨の推定方法を用いる。これらの結果より、長光寺墓地に埋葬された乳幼児の個体数を推定し、死亡年齢を推定する。一方、エナメル減形成や古病理学的な見解から、子墓の形成された要因を探る。 さらに、先行研究で行った大阪府堺市の喜運寺墓地出土の乳幼児骨の分析結果と比較し、遺跡の社会的背景の相違や社会的環境の違いを考慮に入れ、当時の子供に対する親や社会の死生観を検討する。 最後に、日本各地に保管されている幼児骨の情報を入手し、資料の分析を行い、江戸時代における地方や社会的背景により子供に対する死生観や風習の違いを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
人件費:長光寺出土人骨約300体の骨の整理と歯の保存処理を行うが、この時に協力者の協力を必要とする。さらに、研究者と協力者は研究室に搬入された骨を保存処理ならびに復元する。これらの一連の作業には、人件費および調査費を必要とする。 物品費:骨計測のために3次元計測装置の購入を予定していたが、平成23年の東日本大震災の影響で購入できなかったため、それに代わる数種類のノギスを購入し、保存処理が終わったものから、骨計測を行う。 旅費など:他の地域の散在する幼小児人骨の資料調査のため、旅費として研究費を使用する。毎年1回は研究成果の確認のため、共同研究者および協力者が集まり、研究会を開く予定である。このときの協力者の旅費等を負担する。
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