研究課題/領域番号 |
23501215
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
安部 みき子 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80212554)
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研究分担者 |
長岡 朋人 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (20360216)
澤田 純明 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (10374943)
奈良 貴史 日本歯科大学, 歯学部, 准教授 (30271894)
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キーワード | 幼小児骨 / 骨考古学 / 古人口学 / 古病理学 |
研究概要 |
本研究の目的:人類学の分野では研究がほとんど進んでいない幼小児骨の古人口学や 古病理学を研究の対象とする。幼小児骨の古人口を知るためには年齢推定法をの確立する必要がある。従来は、歯の萌出や歯根の状態などで行われてきたが、歯以外にも頭骨の一部の骨や長骨骨幹の遺存率も高い場合が多く、推定法を検討する余地がある。本研究の基礎資料である堺環濠都市遺跡の喜運寺墓地内の乳幼児骨も歯以外の骨格の遺存率は高かった。そこで、骨格から年齢を推定する方法を確立し総合的に検討することで出土幼小児骨のより正確な年齢を推定することがが可能となり、古人口学を研究する上で重要な手掛かりとなる。また、齲歯や食性分析に基づいて古病理学等の見地からも、江戸時代の子供の生活様式などを解明することができる。 研究実施計画:平成24年度は堺環濠都市遺跡の幼小児人骨の頭骨から年齢推定法を検討した。頭骨は骨化が未熟であり頭蓋冠の骨の遺存率は低いが、頭蓋底の骨、特に側頭骨の錐体部や後頭骨の体は遺存率が高かった。そこで、年齢を反映していると思われる計測項目を抽出し、歯から推定した年齢と比較検討した。また、他大学に保管管理されている既知年齢のものと比較検討した結果、良好な結果が得られので人類学会誌(2012)に発表した。平成25年度は、歯と頭骨以外で遺存率の高い長骨骨幹を用い、年齢推定法を確立する計画である。 次に、これらの年齢推定法を用い、愛知県東海市長光寺墓地内の「子墓」から出土した乳幼児骨の年齢を推定し、古人口を検討する。また、同時に、古病理学的観察や食性分析の結果を総合し、江戸時代の東海市の子供の生活様式を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究が遅れている理由:愛知県東海市長光寺墓地の幼小児骨の整理するにあたり、下記の理由で計画上の遅れが発生している。 ・長光寺の幼小児骨は研究室に持ち帰るための土の除去作業を平成24年度の中旬に終わらせる計画であったが、骨が脆弱なうえに約100体分の作業が残っていたことで遅れが生じた。 ・土の除去作業が終わった小児骨は脆弱であり搬送業者に委託することができないため、研究者が手荷物として運搬した。したがって、一度に大量の骨を運ぶことができず、複数回に分けて搬送した。 ・研究を始める前にこれらの骨は保存処理をすることが遅延の原因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
幼小児骨の年齢推定方法の確立:遺存率の高い長骨骨幹の計測項目より年齢推定が可能な骨計測項目を検出する。資料はすでに歯と頭骨より年齢が推定されている堺環濠都市遺跡喜運寺の幼小児骨で、長骨骨幹の計測項目を設定する。その項目のなかでも年齢と相関の高いものを抽出し、計測の容易性や計測誤差などを検討する。そのうえで、抽出された計測項目が他大学に保管されている既知年齢の幼小児骨に適応できるかの検証を行い、長骨骨幹からの年齢推定法を確立する。 出土幼小児人骨の保存処理:研究室に搬入された東海市長光寺幼小児人骨は保存処理として、骨をアルコール洗浄後、アセトンに溶融した樹脂を各骨に塗布し、補強する。保存処理ができたものから、頭骨と長骨骨幹の計測項目の計測を行い、年齢推定を行う。一方、歯もエナメル質の破損が大きいために同様の保存処理を行う。保存処理が終了後、顎骨での萌出状態や歯根の形成状況等から年齢の推定を行う。骨格と歯から導き出された推定年齢の検討を行う。 歯や骨の病変等の観察と食性分析:長光寺の幼小児骨の乳歯はエナメル質減形成や齲歯などの観察を行う。さらに、同位体食性分析も行い、長光寺の「子墓」に埋葬された幼小児の栄養状態や生活習慣による古病理の検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
人件費:愛知県東海市長光寺から出土した幼小児骨の保存処理と復元を行うために、研究者や研究協力者の手助けが必要であり、人件費および調査費を必要とする。 旅費:日本各地の大学や研究施設に散在する既知年齢の乳幼児骨の調査を行うための旅費が必要である。さらに、毎年1回行っている研究成果の発表会を計画しており、研究協力者の旅費等も負担する。 消耗品費:保存処理に必要な薬品を購入する。
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