研究概要 |
人類遺跡から出土する未成人骨の研究は,現状ではあまり進んでいない.本研究は,未成人骨の死亡年齢の推定,栄養状態の観察や齲歯率を分析し,子供の生活環境の復元を目的とした.資料は大阪府堺市喜運寺墓地から出土した江戸時代の胎児・乳幼児骨である.本遺跡出土人骨の死亡年齢は胎児から5歳で,週産期のものが最も多かった.乳歯のストレスマーカーで栄養状態を調べた結果22%にストレスが見られた。この頻度は江戸の遺跡との比較でも有意差がなく, 近世の江戸と生活環境に大差がなかった.本遺跡出土人骨の齲歯率は10.1%で,武士(17.1%)や町人(26.9%)よりも低く,歯磨きの習慣が浸透していた可能性がある.
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