研究課題/領域番号 |
23501217
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研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
伊藤 美香 昭和女子大学, 研究支援機器センター, 助教 (70276624)
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キーワード | 繊維鑑別 |
研究概要 |
平成25年度は、平成23年度にサンプル取得し、平成24年度にデータ取得した宮城、福島、群馬、栃木、長野、大分の6県の国内各産地の大麻繊維(同一産地における生産時期の異なる試料を含む)8種について、単繊維同士の膠着をほぐすために米とぎ汁で前処理した各50本の単繊維の電子顕微鏡による形態観察および繊維幅、断面積、周囲長を測定した各数値の平均を統計処理することにより、それらに産地による有意差があることが判明した。その結果を日本文化財学会第30回大会にてポスター発表したところ、本分野の研究を深め学界に寄与するものとして学会ポスター賞を頂戴した。 その後、前述の前処理試料を炭化速度20℃毎分および1℃毎分で人工炭化させたものについて、各50本の単繊維の電子顕微鏡による形態観察および繊維幅、断面積、周囲長を測定し、同様にデータ取得に努めてきた。 データ取得においては、炭化や劣化により、しなやかさを失い脆くなった繊維について、正確な測長が可能な断面を取得する方法を検討した。その結果、アセトン凍結による割断によって、断面形態を保持した状態での単繊維断面の作製が可能になることが分かった。これにより、本割断方法でのデータ取得に統一するため、既に取得済みであったデータについてもやり直す手間がかかってしまった。 またさらに、幅広い繊維原料のデータを収集するため、標品試料となる繊維原料の収集を行い、平成25年度は沖縄の芭蕉布の原料となり「糸芭蕉」を現地の糸芭蕉の畑に赴き、自ら繊維を収集してきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
酵素法による人工劣化試料について、脆くなった試料の断面作製が困難であったことにより、断面作製方法に検討が必要となった。その際、同じく繊維が劣化する炭化繊維においても検討を進め、アセトン凍結による割断法によって、より測定に適した試料断面が作成できることが分かった。そのため、炭化試料についても、改めて本方法で断面を作成し直して、測定したことにより、手間を要したため、データの集積が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
劣化繊維の断面作製方法に解決の目途がたってきたので、今後は本方法でのデータ取得に努め、データベース構築にむけて課題を推進していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
データベース構築のための、システム環境が当初計画時よりも低額で済むことが判明したこと。並びに、人工的に劣化・炭化させて脆くなった繊維の断面作製法の検討に時間を要し、データ集積のための工程、データベース構築が遅れており、継続して研究課題を遂行するため。 データベース構築のためのソフトウェアおよびデータ集積のための実験試薬代、さらに日本の自然布原料である繊維試料の取得のために充てることとする。
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