平成26年度は、平成23年度にサンプル取得した国内各産地6県(宮城、福島、群馬、栃木、長野、大分)の大麻繊維(同一産地における生産時期の異なる試料を含む)8種について、平成25年に米とぎ汁で前処理した試料を炭化速度20℃毎分と1℃毎分で人工炭化させた際の繊維形態の変化を電子顕微鏡を用いて観測し、各サンプル50本の単繊維について、形態および繊維幅、断面積、周囲長のデータを採取し、その平均値について統計的に解析した結果を平成24年度に採取した未処理サンプル(米とぎ汁で前処理した試料)のデータと比較して、日本文化財科学会第31回大会にて報告した。 さらに、同未処理サンプル(米とぎ汁で前処理したもの)を用いて繊維が土中で劣化分解する状況をセルロース分解酵素(ドリセラーゼ)で疑似的(ドリセラーゼ15FPU、反応温度30度、反応時間48時間)に作り、繊維を人工劣化させて、繊維の糖化度とその形態変化についても同様にデータを採取、統計的な解析を加えた。 これにより、国内各産地の大麻繊維(8種)について、未処理の状態の繊維の形態や大きさのデータを基として、出土遺物として発掘されることの多い、土中においても残存しやすい状態となっている炭化繊維の状態を作り出した人工炭化繊維と土中にて微生物の分解等を受けながらも僅かながら残存して遺物として発掘されることもある、劣化分解した繊維の状態を作り出した人工劣化の各繊維形態および大きさの変化のデータが揃うこととなり、これらのデータを用いて、データベース構築ソフト「Filemaker」を用いてデータベース化を進めてきた。
|