研究課題/領域番号 |
23501222
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 泰弘 東京大学, 総合研究博物館, 研究員 (30447354)
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研究分担者 |
佐々木 猛智 東京大学, 総合研究博物館, 准教授 (70313195)
松原 尚志 兵庫県立人と自然の博物館, 自然・環境評価研究部, 主任研究員 (30311484)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 博物館学 / 古生物学 / 証拠標本 / データベース / 所蔵調査 |
研究概要 |
古生物標本を所蔵する国内の各機関でインターネット上に公開されているデータベースについて、それらの公開データを抽出・再構成し、それらを一括して横断検索できるデータベースを作成した。研究グループの所属する東京大学総合研究博物館の他、北海道大学総合博物館、東北大学総合学術博物館、産業技術総合研究所地質標本館、国立科学博物館(無脊椎動物、脊椎動物、植物、微化石)、瑞浪市化石博物館、京都大学総合博物館、九州大学総合研究博物館を対象に行った。標本レコード総数は、235,609件である。このうち、63,809件(記載文献数2,008件)が、所蔵調査・文献調査によって論文で記載された証拠標本として判明した。また、このデータベースは、関係者のみへの公開(URLの連絡)だが、インターネット上で閲覧できるようにした。(URLは、本報告書の備考欄に記載)本研究の目的は、古生物学の論文に記載された証拠標本について、国内の博物館・研究機関における所蔵の実態調査を行い、それらの標本情報や文献情報が体系的に一覧できるデータベースを構築することであるが、平成23年度の成果として、その基盤となるフレームワークを作成することができた。研究実施計画にもあるように、このデータベースを基盤として、各機関における標本の所蔵状況を事前調査し、今後の実態調査を計画的に行うことができるようになった。平成23年度は、東京大学総合研究博物館、産業技術総合研究所地質標本館、東北大学総合学術博物館で、標本の所蔵状況の実態調査を行った。東大博物館では随時所蔵調査を行い、産総研地質標本館、東北大博物館では、予備的な所蔵調査を行った。また、本研究の目的の一つが、収蔵部門の関係者との情報交換であるが、この調査で今後の調査方針や、データの規格化、標準化のあり方について話し合うことができ、今後の共同作業の協力関係を築くことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度の研究実施計画として、インターネット上に公開された各所蔵機関の古生物標本データベースから、所蔵された標本に関する情報を抽出し、それらが一覧できる証拠標本データベースを作成するが、本年度は、その研究実施計画どおり達成することができた。本研究の目的と、その研究成果を発信する方法は、古生物学研究で論文に記載された証拠標本について、国内の所蔵機関を一覧できるデータベースを構築・公開することであるが、その標本レコード数や、フレームワークについて、ほぼ目標を達成することができ、関係者に周知することができた。そのため、各機関との協議によって、このデータベースをいつでも公開できる段階まで進むことができた。次に、各所蔵機関における記載証拠標本の実態調査であるが、研究グループの所属する東京大学総合研究博物館における調査は、ほぼ計画通りに進められた。その一方で、他の機関における調査や、収蔵部門の関係者との情報交換については、やや遅れている。その理由として、本研究で特に重視している明治・大正・昭和前期に収集された標本について、それらを多数所蔵し、優先的に調査しなければならない機関において、移転作業(国立科学博物館)、及び、東日本大震災による復旧作業(産業技術総合研究所、東北大学総合学術博物館)により標本室が使用できなくなったためである。特に、本年度前半は、本研究グループの方から当該機関への調査活動を控えるなどしたため、調査が十分にできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究の結果、国内の所蔵機関の古生物標本を一括して横断検索できるデータベースについて、その主要なフレームワークは完成した。今後は、このデータベースを基盤に、調査対象となる古生物証拠標本をリストアップし、国内の博物館・研究機関において所蔵状況を実態調査し、より精密な調査を進める。また同時に、実物標本と標本ラベルをデジタル写真撮影し、データベースをより充実したものにする。研究グループが所属する東京大学総合研究博物館において、明治・大正・昭和前期に収集された北海道・サハリン産の白亜紀アンモナイト・二枚貝化石、及び、日本・台湾産の新生代貝類(軟体動物)化石、現生貝類標本について目録作業を進める。特に、平成23年度に作成した横断データベースによって、全国の標本情報が一覧リストで明示できるようになった結果、北海道・サハリン産化石標本群と関連する記載証拠標本が、九州大学総合研究博物館、北海道大学総合博物館に、予想以上に多数保管されていることが判明した。そのため、これらの博物館と共同した目録・データベース化作業を進めていく予定である。これらの所蔵調査や目録・データベース化作業に並行して、各機関の収蔵部門の関係者との情報交換を行う。特に、本年度に作成したデータベースは、現在、関係者に周知するようにしているが、これを基盤に、データの規格化、標準化の可能性を含めた各機関収蔵部門どうしの共同作業の促進や、各機関を横断検索できるネットワークを構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、国内の博物館・研究機関において、論文で記載された古生物証拠標本の所蔵状況の確認や実態調査による精密な調査を進める。同時に、平成23年度作成の国内の所蔵機関の古生物標本を一覧できるデータベースについて各機関の収蔵部門の関係者に周知し、このデータベースを基盤に、各機関どうしの共同作業の促進や、データの規格化、標準化の可能性について話し合う予定である。これらの計画のため、平成24年度分の研究費の50%程度は、所蔵調査、打ち合わせのための予備調査、及び本研究のこれまでの成果を学会等で発表するための旅費として使用する予定である。また、平成23年度は各機関における記載証拠標本の所蔵調査が計画通りに進まなかったため、その繰り越した研究費は、所蔵調査、予備調査を主体に使用する。これらの調査は、平成23年度中にデータベースに掲載された所蔵機関を対象に行う予定である。平成24年度の所蔵調査では、実物標本と標本ラベルをデジタル写真撮影する予定であるが、そのためのカメラ機材一式と、保存取り込み用に移動可能なノートパソコン(ソフトウェア等を含む)等を研究費で購入する予定である。本研究では、明治・大正・昭和前期の論文に記載された証拠標本を調査するが、記載文献とその証拠標本がセットで保管されることが重要であると考えている。特に明治・大正期の論文・書籍は貴重であるため、これらの文献類について入手可能であれば、当該文献の収集のために研究費を使用する予定である。
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