研究課題/領域番号 |
23501222
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 泰弘 東京大学, 総合研究博物館, 技術補佐員 (30447354)
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研究分担者 |
佐々木 猛智 東京大学, 総合研究博物館, 准教授 (70313195)
松原 尚志 兵庫県立人と自然の博物館, 自然・環境評価研究部, 主任研究員 (30311484)
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キーワード | 博物館学 / 古生物学 / 証拠標本 / データベース / 所蔵調査 |
研究概要 |
本研究の目的は、明治・大正、昭和前期に記載された古生物標本について、国内の博物館・研究機関における所蔵状況を調査することであるが、平成24年度は、北海道大学総合博物館、東北大学総合学術博物館、京都大学総合博物館、産業技術総合研究所地質標本館、国立科学博物館、東京大学総合研究博物館を調査した。その結果、各機関における収蔵・保管方法、標本情報の入力方法の相違や特徴が明らかになった。例えば、収蔵方法が、登録番号順、分類群順、研究者別など、各機関ごとに異なることがわかった。そして、そのために、データベースへの入力フォーマットに違いが生じていることが明らかとなり、今後の調査方法や、データベースの規格統一を進める上での手がかりを得ることができた。また、この所蔵調査にともない収蔵部門の担当者と情報交換を行い、今後の協力関係を築くことができた。 本研究ではまた、国内の所蔵機関の古生物標本情報を一括して横断検索できるデータベースの構築を進めているが、平成24年度は、在日本脊椎動物化石標本データベース情報を追加した(レコード数:17040件)。その結果、古生物標本横断データベースのレコード総数は、252,649件となった。また、これまではデータベース管理ソフトとしてFileMakerを利用し、公開用サーバにもFileMaker Serverを使う予定であったが、今後の様々な機関との連携や、データベースの規模の拡大を考慮し、検索の高速性やコスト面で有効なMySQLデータベースを公開用に採用することにした。そのために外部サーバへの移転作業を行った。 また、本研究の主要テーマに関連した博物館企画として、東京大学総合研究博物館において展示を行った。論文に記載された証拠標本の保管・整備の重要性をアピールするよう、東大古生物学の130年の研究史について、これまでに整備された証拠標本を主体に展示を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の主要目的である明治・大正・昭和前期に収集・記載された古生物標本の所蔵状況の調査について、研究グループの所属する東京大学総合研究博物館における調査は計画通りに進められた。また、平成23年度の計画では進められなかった東北大学総合学術博物館、産業技術総合研究所地質標本館、国立科学博物館における調査は、ほぼ計画通りに進められた。その一方で、平成23年度に計画の遅れがあり、その分を平成24年度に行ったため、九州大学総合研究博物館における調査は、昭和前期の標本を多数所蔵していることがはっきりしていたにもかかわらず、日程調整ができなかったために年度内に行うことができなかった。 次に、本研究のもう一つの目的に、国内の所蔵機関の古生物標本を一括して横断検索できるデータベースを構築・公開することがあるが、平成24年度分の標本データの追加やレコード総数、フレームワークの構築について、ほぼ目標を達成することができた。また、この古生物標本横断データベースについて関係者に周知・協議することができ、各機関の標本データを利用しての公開について同意・許可を得ることができた。そのため、このデータベースをいつでも公開できる段階まで進むことができた。また、今後のデータベースの連携や規模の拡大に対応するために、より有効なデータベース管理システムへの移行も速やかに行うことができた。 その一方で、平成24年度の研究実施計画において、学会などを利用したワークショップあるいは研究集会を開き、各機関の所蔵部門の担当者による情報交換を行う計画であったが、古生物標本横断データベースについて関係者への周知や説明がやや遅れたため、平成25年度以降に行う計画となった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの標本所蔵調査を継続して行い、研究グループが所属する東京大学総合研究博物館では、明治・大正・昭和前期に収集された日本・台湾産の新生代貝類(軟体動物)化石、現生貝類標本、脊椎動物化石、及び北海道・サハリン産の白亜紀アンモナイト・二枚貝化石について目録・データベース化を進める。また、北海道・サハリン産化石標本について、関連標本が九州大学総合研究博物館、北海道大学総合博物館に保管されていることから、これらの博物館と共同しての調査を進める予定である。 次に、国内の所蔵機関の古生物標本を一括して横断検索できるデータベースについては、これまでにその主要なフレームワークを完成することができた。しかし、現在のデータベースは、各機関ごとでデータの入力フォーマットの異なるものを、大まかに統合しただけのものである。そのため、今後は、それらの入力項目を整理し、新たに再整理・統合して、より活用しやすいデータベースになるよう改良を進める。また、実物標本や標本ラベル等の画像を撮影し、新たにデジタル情報を追加するとともに、すでにインターネット上に公開されている標本に関する様々なデジタル情報についても収集し、国内古生物標本情報のポータルサイトとしての機能の充実を図る。 また、この国内の所蔵機関の古生物標本を横断検索できるデータベースは、これまで大学博物館等を中心に作成してきたが、今後は地方公立博物館などにもデータ提供などの協力を要請する。その上で、このデータベースを基盤に、各機関どうしの共同作業の促進や、データの規格化、標準化についての情報交換を進める。これらの情報交換は、各機関の担当者と個別に話し合うとともに、さらに、標本の保管状況やデータベース化状況を話し合うために、ワークショップあるいは研究集会を開催する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、国内の博物館・研究機関における論文で記載された古生物証拠標本の所蔵状況の確認や実態調査について、さらに精密な調査を継続して進める。また、国内の所蔵機関の古生物標本を一覧できるデータベースについて、これまで大学博物館等が中心であったが、今後は地方公立博物館等との協力関係を進め、それらの収蔵部門の担当者との情報交換・協議を行う予定である。このような計画のために、平成25年度分の研究費の50%程度は、所蔵調査、情報交換のための打ち合わせや研究集会、及び本研究のこれまでの成果を学会等で発表するための旅費として使用する予定である。また、平成23年度に繰り越した所蔵調査等のための研究費については、これらの所蔵調査や情報交換のための費用に使用する予定である。 本研究では、これまでに明治・大正・昭和前期に収集された標本の所蔵調査を行い、それらの目録・データベース化作業を進めてきた。平成25年度は、本研究の最終年度であり、その成果を公表するために、標本カタログ・図録の出版費用、及びデータベースをインターネット上に公開する費用として研究費を使用する予定である。また、平成24年度に繰り越した研究費については、これらの研究成果を目録・データベースに取りまとめるための作業補助や打ち合わせのための費用として使用する予定である。 また、本研究では、明治・大正・昭和前期の論文に記載された証拠標本を調査しているが、その記載文献についても、証拠標本とセットで保管されることが重要であると考えている。そのため、特に明治・大正期の論文・書籍は貴重であるため、これらの文献類について入手可能であれば、必要に応じて当該文献の収集のために研究費を使用する予定である。
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