研究課題/領域番号 |
23501224
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
杉山 岳弘 静岡大学, 情報学部, 准教授 (70293595)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | インタプリテーション / マルチモーダル・データベース / 博物館 / ガイド |
研究概要 |
本研究の目的は、博物館の現場におけるインタプリテーション活動を支援するため、収蔵品の持つ文化や歴史や科学や芸術など、その豊かな世界をマルチモーダル・データベース(学芸員が解説するような知識構造と豊かな表現を持った映像や音声やテキスト等で表されたストーリーを持ったコンテンツのデータベース)を構築することにある。これにより、来館者に良質な学習環境を提供するとともに、従来の博物館のデータベースを拡張し、それぞれの収蔵品と関連情報を有機的に結びつけ、さらに、学術的にもこれまで表現しにくかった貴重な時事の記録を蓄積・活用できる環境を提供する。 平成23年度では、学芸員ガイドのベースとなるストーリーの分析およびモデル化と、博物館におけるインタプリテーションの導入についての調査を実施し、マルチモーダル・データベースの基本アーキテクチャの検討を行った。 博物館におけるインタプリテーションの導入についての調査では、浜松市博物館を対象とした来館者の実態調査および琵琶湖博物館の展示交流員を対象としたインタプリテーションの実態調査を実施し、インタプリテーション導入の可能性と効果と課題を明らかにした。 学芸員ガイドのベースとなるストーリーの分析およびモデル化では、学芸員のガイドを撮影して対話をストーリーの観点で分析して、学芸員ガイドのモデル化を行い、さらに実際にボランティアスタッフにインタプリテーションの導入を試み、試験的な導入実験をして効果があることを確認した。 マルチモーダル・データベースの基本アーキテクチャの検討では、ガイドのモデル化をベースにして、インタプリテーションを支援するための映像により支援コンテンツとデータベース及びメタデータの設計を行った。メタデータは、既存の収蔵品データベースを結びつけるもので、ガイドを行う上でより豊富な知識の支援を行うためのものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である、博物館の現場におけるインタプリテーション活動を支援するため、収蔵品の持つ文化や歴史や科学や芸術など、その豊かな世界をマルチモーダル・データベースを構築について、基本となるモデル化とアーキテクチャの設計、および、それらをインタプリテーション活動の支援で実運用するための博物館での調査と分析を行うことができ、当初の年度目的を達成できたと言える。 具体的な達成した課題は、1.現状の博物館におけるインタプリテーションの実態調査、2.学芸員のガイドの収集とストーリーの分析、3.学芸員のガイドのモデル化、4.インタプリテーション支援のための映像コンテンツの制作、5.映像コンテンツと既存データベースを包含するメタ情報の分析と設計、6.映像コンテンツのデータベース化である。 2と3と5について、ストーリーのモデル化のベースとして、これまで撮影してきた学芸員のガイドの解説映像を対象として、泉子・K・メイナードによる「会話分析」のテーマ展開パターンを基本にして、大枠としては歴史、自然、芸術、文化、科学、宗教などの観点から、さらに詳細なトピックまで分析をして、学芸員のガイドのストーリーのモデル化を行った。分析されたガイドのストーリーをデータベース化し、既存のデータベースと関連付けるための、メタデータおよびアーキテクチャの検討した。4と6については、ガイド・プログラムとして実現して、映像のみならずシナリオとして編集してデータベース化するように試みた。これにより、インタプリテーションの試験的な導入の第一段階を早めることができ、すでに効果があることを確認している。 なお、データベースの利用で重要となる知的財産権の取り扱いについては、フィールドとなる浜松市博物館とデータベース利用(知的財産権の取り扱い)に関する契約を結んだ。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策については、実際に歴史博物館において、浜松市博物館と連携をしてインタプリテーションの試験的な実施を進めつつ、インタプリテーション活動を支援するための博物館の収蔵品の本格的なコンテンツ制作およびマルチモーダル・データベース構築を実施していく。継続して、各所の博物館で実施されているガイドの収集とコミュニケーションの分析とデータベース化を、さらに、メタデータの記述精度を上げつつ、既存のデータベースと結合するアーキテクチャを設計して、マルチモーダル・データベースの構築および活用・評価を行う。 具体的な課題としては、1.学芸員ガイドの収集と分析とデータベース化、2.インタプリテーション支援のためのコンテンツの制作、3.インタプリテーション支援のためのメタデータおよびアーキテクチャの設計、4.マルチモーダル・データベースのシステムの実装と構築、5.マルチモーダル・データベースを活用したインタプリテーションの実験と評価の試行である。 この段階で、メタデータとして、記述できる範囲とできない範囲をさらに詰めていき、メタデータとアーキテクチャの改良も行う。また、対象の博物館のインタプリテーションの施設を利用して、実際に現場でマルチモーダル・データベースを活用する試行を行い、その効果を評価していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
備品としては、実験用のコンテンツ公開用のWebサーバを設置する。消耗品については、映像を撮影・編集するためのメディアを計上する。旅費については、博物館の調査および成果発表を計上する。謝金については、多くのデータの入力と分析が必要なため作業補助の謝金と映像を撮影・編集するための謝金を申請する。
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