研究課題/領域番号 |
23501226
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研究機関 | 札幌市立大学 |
研究代表者 |
町田 佳世子 札幌市立大学, デザイン学部, 准教授 (40337051)
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研究分担者 |
大西 奈美子 (河村 奈美子) 大分大学, 医学部, 准教授 (50344560)
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キーワード | 動物園 / 飼育体験 / 子どもの学び / 連想法 |
研究概要 |
現代の動物園は、自らを「いのちの博物館」と位置づけ、生物的多様性の維持や環境・生命の大切さを伝える様々な教育・普及活動を行っている.その活動の一つである飼育体験に参加する子ども達が、体験をとおしてどのような学びを経験しているのかを知ることが必要だが、子どもの場合は大人と異なり、学習したことを、内省的に捉え言語化して表現することができるとは限らない。そのため体験後に聞き取りやアンケートを行っても、学びの内容を把握することに限界があった。そこで平成25年度は、連想法を用い、体験前後の連想語の内容や数を比較することで、体験による学びを明らかにすることを試みた。そのことにより、プログラムを担当する飼育担当者、言い換えれば専門的実践家のメッセージのどの側面がより伝わったのかを知ることができる。 飼育体験に参加した小学校4年生~6年生の子ども達にアンケートを配布し、体験前と体験後に、「動物園にいる動物」という言葉から連想することばを自由に書いてもらった。96件の有効回答(回収率51.9%)には、体験前に420語(121種類)、体験後に385語(151種類)が記載されていた。体験前には多くの回答者が「ライオン」「ゾウ」「クマ」など典型的な動物園の動物名を想起していたが、体験後には、これらの想起率は下がり、一方で体験前に全く想起されていなかった「アヒル」や「トカゲ」などの身近な動物名や、「クマ」だけでなく「マレーグマ」「ヒマラヤグマ」などより個別種の名前が連想されるなど、動物の種類の数的・質的変化があった。また飼育に関する言葉についても、体験前は「飼育」「エサ」「飼育員」などの一般的な表現にとどまっていた連想語が、体験後は「エサをカットする」「掃除」「体調管理」など、関連し体系をなす言葉が連想されていた。これらの結果から、種の多様性や飼育という概念の深化という学びが生じたのではないかと考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度には、子どもを対象に連想法を用いた体験による学びの調査結果を分析し、成果を論文にまとめることができた。また、同じく子どもを対象とした漫画をもちいた学びの調査の解析を行い、平成26年度の学会で発表する予定となっている。 平成25年度には、新人の飼育担当者を対象として、子どもの体験と大人の体験の発話内容を録音し、参加者の年齢や経験の違いに応じて、説明内容や説明の仕方をどう変えているかの調査を行った。この結果を、平成24年度までに収集した、ベテランの飼育担当者と比較する作業を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究が予定していた動物園での調査は、平成25年度まででおおむね実施することができたので、今後はそれらを研究成果としてまとめ、成果発表をしていくことが中心となる。本研究を開始してからこれまで学会・論文等で発表してきた成果も総合して、飼育担当者が無意識に用いている、教えたり伝える方法についての「ゆるやかな理論」を抽出し、参加者の認識的・心理的変化をもたらす働きかけ方、伝え方の構造を見いだしたい。 また今年度は、自然系博物館における解説員等の解説内容に関する調査を行い、そこでの働きかけ方、伝え方の構造を、動物園での結果と比較することで、展示内容の違いが解説にどのような影響を与えているかを調べる予定である。
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