研究課題/領域番号 |
23501229
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研究機関 | ミュージアムパーク茨城県自然博物館 |
研究代表者 |
佐々木 広美 (池澤 広美) ミュージアムパーク茨城県自然博物館, その他部局等, その他 (60568426)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 貝類 / 博物館 / 市民参加 / 標本 |
研究概要 |
茨城県では,貝類についての総合的な調査は行われておらず,国内で調査の進んでいない空白地域の一つとされている。これまで,いくつか報告はあるものの,標本が現存していなかったり,現存していても誤同定が多いことが指摘されている。本調査では,様々な調査方法を試み,まだ実態のつかめていない茨城県の陸産貝類相を明らかにすることを目的として実施された。具体的な調査方法と成果は下記の通りである。(1) 市民参加型の陸産貝類調査:新聞による調査協力の呼びかけ(2011.5.23,6.30付けの茨城新聞),小学校へのチラシの配布(9月中旬に茨城県内の164の小学校へ配布),来館者へのチラシの配布(2011.9.24から11.30まで茨城県自然博物館内にチラシを置く)により,市民参加型調査を実施した結果,12種の陸産貝類が確認された。特に,国内外来種であるコハクオナジマイマイが県央地域を中心に広く生息し,農作物に被害を与えている実態も明らかになった。また,国内では土浦市でしか確認されていない外来種のマダラコウラナメクジが,小美玉市,かすみがうら市,石岡市,鉾田市にも生息していることが明らかになった。これらの結果の一部については,2012年に開催された日本貝類学会で発表した。(2) 現地調査:県北地域を中心に現地調査を実施した結果,62分類群 (うち種まで同定されたものは52)が確認され,そのうち15種が県内初記録種であった。(3) 既存標本の調査:茨城県内の貝類相を知る上で欠かせない坂寄廣陸産貝類コレクション約1,800点と叶野勝雄海産貝類約8,000点コレクションの整理と再同定を実施した結果,陸産貝類14科44種と海産貝類93科353種が確認された。海産貝類については,結果の一部を2012年に開催された日本貝類学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度では,市民参加型調査,現地調査,既存のコレクションの調査の3つの調査方法を確立するとともに,専門家の協力を得て,予定通り調査を遂行し,学会等でも成果の一部を発表することができた。しかし,今後,以下の点で改善が必要である。(1) 市民参加型の陸産貝類調査:茨城県全域の小学校にチラシを配布したが,まだパッチ状にチラシを配布していない地域があり,得られた標本も少なかったため,まだ茨城県全域の大型陸産貝類の生息状況を把握するまでには至っていない。今後は,チラシの配布時期を考慮しながら,未調査の地域を対象に調査を継続する必要がある。(2) 現地調査:専門家や地元の研究者やコレクターとともに,現地調査を実施できたことは大きな収穫であった。しかし,県北地域を中心とした一部の地域でしか,現地調査が実施されていないため,まだ茨城県の中型・小型の陸産貝類の全体像が把握できていない。今後,未調査地域での継続的な現地調査が必要である。(3) 既存標本の調査:茨城県内で最大の貝類のコレクション群である坂寄廣陸産貝類コレクションと叶野勝雄海産貝類コレクションの整理と再同定ができたことは,茨城県の貝類相を把握する上で大きな成果であった。しかし,まだ微小貝など,判別の困難な種の同定が残っている。今後,それらの詳細な調査を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,市民参加型調査,現地調査,既存のコレクションの調査の3つの調査方法で,今後も調査を継続する予定である。市民参加型調査においては,未調査の地域の小学校を対象にチラシを配布するとともに,来館者へのチラシの配布も継続する。現地調査においては,専門家や地元の研究者などとともに未調査の地域の調査を実施する。また後進の育成のため,茨城県自然博物館のジュニア学芸員(中学生・高校生)とともに,博物館野外や筑波山などで調査を行う。既存のコレクションの調査においては,引き続き,坂寄廣陸産貝類コレクションと叶野勝雄海産貝類コレクションの整理と再同定を実施するとともに,淡水貝類のコレクションの調査にも力を入れていく。これらの調査で得た結果は,種ごとにまとめ,データベース化する。 また,2012年7月に開催される企画展「不思議いっぱい!貝たちの世界-蝸牛から烏賊・蛸まで-」で,成果の一部を一般に公表するとともに,原稿にして,雑誌に投稿する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
H23年度は調査を中心に実施したが,H24年度は調査と併せて,標本の整理,データのまとめ,データベース化の作業を進める。そのため,以下の研究費を予定している。(1) 消耗品:市民参加型調査や現地調査等を行うために,必要な観察・採集用具,容器,薬品等の消耗品が必要である。また,既存コレクションを整理するために必要な標本箱等の消耗品を購入する予定である。(2) 旅費:主に調査者の現地調査の他,学会等での発表のための旅費として使用する。(3) 撮影機器:標本のデータベース化を進めるにあたり,カメラなど,標本の画像を残すために必要な機器を購入する。特に微小貝の撮影できる機器を購入する予定である。(4) PCとその付属機器等:標本のデータベース化を進めるため,PCとそれに関連する機器やソフトを購入する予定である。(5) 謝金:主に,専門家による標本整理・同定作業のための謝金を予定している。(6) その他:市民参加のモニタリング調査で,市民と情報や標本のやりとりをする通信費が必要である。また,H25年度に,ミニ図鑑を作成するための準備をする。
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