研究課題/領域番号 |
23501229
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研究機関 | ミュージアムパーク茨城県自然博物館 |
研究代表者 |
佐々木 広美(池澤広美) ミュージアムパーク茨城県自然博物館, その他部局等, 首席学芸員 (60568426)
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キーワード | 貝類 / 博物館 / 市民参加 |
研究概要 |
茨城県の貝類相の実態を把握するため,茨城県の貝類コレクションの再同定とデータベース化の他,陸産貝類を中心に現地調査や市民参加型調査を実施した。それらの調査で得られた結果は博物館の刊行物や企画展の展示等を通して広く一般に還元・普及した。 ① 市民参加型の陸産貝類調査:専門家等の協力の下,茨城県自然博物館のジュニア学芸員(自然に関心の深い中高生)6名とともに筑波山と博物館野外で陸産貝調査を実施し,標本製作・同定を行った結果,筑波山で14種,博物館野外で11種の陸貝類を確認した。これらの作業の様子は映像に残すとともに,博物館友の会ニュースで紹介した。また,一般の方々 (大人16名,子ども6名) やジュニア学芸員 (4名) ,専門家等とともに,筑波山で自然観察会・調査を実施し,18種の陸産貝類を確認した。この他,博物館来館者から外来種のマダラコウラナメクジの生息情報を収集した。 ② 陸産貝類の現地調査と種同定:専門家等の協力を得ながら,平成23年度で実施していない平野部を重点的に14市1町 (36地点) で陸産貝類の調査を実施した。その結果,県内初記録のケシガイやスナガイなど50種の陸産貝類が確認され,これまでの調査で確認された茨城県の陸産貝類は合計23科73種となった。 ③ 海産貝類コレクションの再同定とデータベース化:茨城県で最大の貝類コレクション群である叶野勝雄海産貝類コレクションの再同定やデータベース化を進めた。 ④ 企画展での公表:平成24年7月7日~9月17日に開催された第55回企画展企画展「不思議いっぱい!貝たちの世界‐蝸牛から烏賊・蛸まで‐」で,これまで市民参加型モニタリング調査やジュニア学芸員との調査,既存コレクションの調査で得られた結果を展示や展示解説書に反映した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度は,茨城県の陸産貝類について,専門家等と現地調査を行うとともに,市民参加型調査を実施した。特に後者では,博物館来館者による外来種のモニタリング調査に加え,新たに博物館のジュニア学芸員と一般の人々と一緒に陸産貝類の調査を行うことができた。そして,それらの成果を貝類に関する企画展等を通して,一般に広く周知することができたことは評価される。しかし,以下のような反省点があるため,今後の調査で検討していく必要がある。 ① 市民参加型の陸産貝類調査:企画展の準備等で,今回は予定していたモニタリング調査を十分に実施することができなかった。現在までに得られているデータは茨城県全域を網羅しておらず,今後,追加の調査が必要である。 ② 陸産貝類の現地調査と種同定:専門家や地元の研究者やコレクターなど,多くの協力者の下で,未調査の平野部における現地調査が実施できたことは大きな収穫であった。しかし,まだ現地調査が実施されていない空白地帯が残されているため,今後,継続的な現地調査が必要である。 ③ 貝類標本のデータベース化:叶野勝雄海産貝類コレクションの整理と再同定が完了し,データベース化を進めているが,まだ画像などの取り込みが終了していない。また,坂寄廣陸産貝類コレクションのデータベース化もまだ途上であり,継続した作業が必要である。さらに今後,博物館へ茨城県産淡水貝類コレクションの寄贈が予定されているが,それらのデータベース化も進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,未調査の地域を対象に市民参加型調査と現地調査で追加調査を実施するとともに,既存のコレクションを含む標本のデータベース化を進める予定である。特に微小貝類の再同定と画像の取り込みに重点をおいていきたい。また,淡水貝類のコレクションのデータベース化にも力を入れていく予定である。 また,これまで蓄積したデータをまとめて雑誌に投稿するとともに,茨城県の陸産貝類のミニ図鑑を製作・刊行し,環境教育の基礎資料として協力いただいた一般市民や学校へ提供していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度は調査と併せて,標本の整理,データのまとめ,データベース化の作業を進めていく。そのため,以下の研究費を予定している。① 消耗品:市民参加型調査や現地調査等を行うために,必要な容器や薬品等の消耗品が必要である。また標本を整理するための標本箱も必要である。② 旅費:主に調査者の現地調査の旅費の他,学会等での発表のための旅費として使用する。③ その他:茨城の陸産貝類のミニ図鑑を製作するための印刷費等,市民参加のモニタリング調査で市民と情報や標本のやりとりをする通信費等が必要である。
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