研究課題/領域番号 |
23501229
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研究機関 | ミュージアムパーク茨城県自然博物館 |
研究代表者 |
佐々木 広美 (池澤 広美) ミュージアムパーク茨城県自然博物館, その他部局等, 首席学芸員 (60568426)
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キーワード | 貝類 / 博物館 / 市民参加 / 標本 |
研究概要 |
茨城県の貝類相の実態を把握するため,主に陸産貝類及び淡水産貝類の現地調査を実施した。これらの調査で得られた成果は,博物館の展示等で活用されただけでなく,現在,製作中の茨城県のレッドデータブック「茨城における絶滅のおそれのある野生生物 動物編(改訂版)」(平成27年度刊行予定)の基礎資料となっている。 1)陸産貝類については,現地調査により12科27種の陸産貝類を確認し,平成23年度以来これまでの調査で確認された茨城県の陸産貝類は合計22科80種となった。今年度に確認できた種のうち,茨城県が基産地でその後,記録のなかったナガオカモノアラガイが土浦3カ所,かすみがうら市1カ所で発見されたことは特記すべきことである。また,これらの結果から得られた分布情報を基に,茨城県のレッドリスト種の候補種として31種を暫定的に選定した。その内訳は,絶滅危惧IA類が2種,絶滅危惧IB類が1種,絶滅危惧II類が4種,準絶滅危惧15,注目種2種,情報不足7種である。 2)淡水産貝類については,これまで実施した現地調査と既存標本の調査の結果,腹足類10科19種,二枚貝類6科20種,合計16科39種の淡水産貝類(汽水種も含む)が茨城県から確認された。現地調査で,県内初記録種であるミズコハクガイが確認できたことは特記すべきことである。 3)南米原産の淡水腹足類であるスクミリンゴガイが行方市のハス田で大発生しているとの情報を得たのを機に,レンコンの産地としてよく知られている霞ヶ浦周辺の7市1町1村63地点で現地調査や農家への聞き取り調査を実施した。その結果,かすみがうら市牛渡,行方市山田,稲敷市浮島で多数の卵塊や生貝を確認したほか,レンコンの葉や種バスなどを食害するケースがあることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
茨城県は生物地理学的に興味深い場所であるが,貝類相についてはこれまで断片的な報告があるに過ぎず,調査の空白地帯といわれていた。また,これまでの報告は標本に基づいたものではなく,誤同定が多いことも指摘されてきた。しかし,本研究で,調査によって得られた標本に基づいてリストを作成することにより,茨城県内の貝類相の実態が着実に明らかになってきている。 平成25年度も茨城県の陸産貝類だけでなく,淡水産貝類についても現地調査が実施でき,一定の成果が得られた。しかし,計画していたが,実施できなかった調査などもあり,今後の調査で補完していく必要がある。詳細は下記の通りである。 ① 当初,予定していた市民参加型の陸産貝類調査を実施することができなかった。現在までに得られているデータは茨城県全域を網羅しておらず,今後,追加の調査が必要 である。 ② 専門家,地元の研究者,コレクターなど,多くの協力者の下で,平地を中心に現地調査を実施したが,まだ未調査の場所が残されている。そのため,今後,継続的な現地調査と同定作業が必要である。 ③ 叶野勝雄海産貝類コレクションと坂寄廣陸産貝類コレクションのデータベース化を進めているが,まだ途上であり,継続した作業が必要である。さらに併せて,今後,茨城県の淡水産貝類コレクションの整理とデータベース化も進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,引き続き,未調査の地域を対象に市民参加型調査と現地調査で追加調査を実施するとともに,海産・淡水産・陸産の貝類のコレクションを含む標本のデータベース化を進める予定である。 また,これまで蓄積したデータをまとめて雑誌に投稿するとともに,茨城県の陸産貝類のミニ図鑑を製作・刊行し,環境教育の基礎資料として協力いただいた一般市民や学校へ提供していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は陸産貝類の現地調査や市民参加型調査の他,ミニ図鑑の製作等を予定していたが,体調的な理由により,実施できなかった。そのため,平成26年度も引き続き,調査等を継続して,ミニ図鑑を完成させたい。 平成25年度は調査と併せて,標本の整理,データのまとめ,データベース化の作業を進めていく。そのため,以下の研究費を予定している。① 消耗品:市民参加型調査や現地調査等を行うために,必要な容器や薬品等の消耗品が必要である。② 旅費:主に調査者の現地調査のための旅費として使用する。③ その他:茨城の陸産貝類のミニ図鑑を製作するための印刷費等,市民参加のモニタリング調査で市民と情報や標本のやりとりをする通信費等が必要である。
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