茨城県の貝類相についてはこれまでいくつかの報告があるものの,長い間,その全体像がつかめない状況にあった。そこで,現地調査の他,市民参加型調査やコレクション調査など,様々な方法を通して標本データを収集して茨城県産貝類相の実態を把握し,それらの情報を広く一般へ還元することを目指してきた。 平成26年度は,現地調査やコレクション調査などを補足的に実施するとともに,これまでのデータを集約し,種ごとに分布状況を把握した。陸産貝類については,山地林や平地などを対象に現地調査を実施し,19科51種の陸産貝類を確認した。中でも常陸太田市でレンズガイやムシオイガイが新たに確認されたのは特記すべきことである。また,これまでの成果を基に茨城県の陸産貝類のミニ図鑑を製作した。 淡水産貝類については,水田などを中心に現地調査を実施し,腹足類10科16種,二枚貝類2科2種,合計12科18種を確認した。中でも昭和63年代以来,茨城県内では生息が確認されていないオオタニシや,県内初記録種であるカワコザラガイとヒメマルマメタニシ類似種が確認されたのは特記すべきことである。特に,ヒメマルマメタニシ類似種は国内もしくは国外外来種の可能性があり,今後さらなる調査が必要と考えている。また,既存コレクションの調査により,日本住血吸虫の中間宿主として知られ,茨城県では絶滅したと考えられているカタヤマガイの茨城県産標本が現存していることが分かった。 これまでの調査で,80種以上の陸産貝類,約50種の淡水産貝類が確認されている。これらのデータは博物館の展示や印刷物を通して一般に還元されただけでなく,茨城県のレッドデータブック「茨城における絶滅のおそれのある野生生物 動物編(改訂版)」(平成27年度刊行予定)の基礎資料とした。
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