研究課題/領域番号 |
23501234
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研究機関 | 神奈川県立生命の星・地球博物館 |
研究代表者 |
勝山 輝男 神奈川県立生命の星・地球博物館, 企画情報部, 企画普及課長 (20214356)
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研究分担者 |
田中 徳久 神奈川県立生命の星・地球博物館, 企画情報部, 主任学芸員 (60270691)
大西 亘 神奈川県立生命の星・地球博物館, 企画情報部, 学芸員 (00588270)
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キーワード | 地方植物誌 / 植物相 / 市民参加 |
研究概要 |
神奈川県では申請者が所属する博物館が中心になり、専門家と市民が協力して『神奈川県植物誌2001』を作成した。この活動を継続しつつ、次の神奈川県植物誌に向けてデータ収集を行っている。本研究はこれらの活動を通じて、調査参加者のモチベーションの維持、レベルアップ、世代交代を進めるプログラムを開発し、博物館における市民が参加しての長期継続型調査研究の博物館学的な事例として考察を行うものである。 平成23年度には植物誌改訂のための課題の整理を行い、平成24年度に植物誌調査会の体制を整え、平成25年4月の神奈川県植物誌調査会総会において、調査者の調査区分担、チェックリストや調査区の地図の配布を行い、約200名の植物誌調査会会員が参加して、植物誌改訂のための植物相調査が本格化した。その結果、平成25年度1年間で2472種14012点の標本が集まり、データベースに登録された。 調査員のモチベーションを高め、植物分類の能力のレベルアップを目的に、平成24年度から植物分類の勉強会や同定会を行ってきたが、平成25年度は5月「イネ科植物その1」、6月「イネ科植物その2」、7月「セリ科植物」、8月「トウダイグサ科ニシキソウ属とバラ科キンミズヒキ属」、9月「マメ科ハギ属」、10月「アカザ科」、11月「ヒユ科」、12月「マメ科ハギ属のリベンジ」、1月「モクセイ科トネリコ属とウコギ科ウコギ属」、2月「イグサ科」、3月「タケ・ササその2」の計11回の勉強会を開催し、厚木市郷土博物館に出向き、標本同定会を行った。また、情報誌「Flora Kanagawa」を発行して、会員に神奈川県新産植物や新分布などの情報を提供している。平成25年度には2回発行し、イネ科の日本新産帰化植物イトハネガヤを報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の平成23年度には植物誌改訂の内容について検討を行うとともに、標本画像データベース作成のための機器をそろえた。 平成24年度には改訂版植物誌の刊行を平成29年(2017年)目標と定めた。また、「神奈川県植物誌2001」や情報誌「Flora Kanagawa」で引用された重要標本の画像データベースを作成したり、ツュンベリーが箱根で採集した歴史的な標本のデータを整えるなど、今後の植物誌改訂にむけての基礎資料の蓄積が行われた。また、植物分類の勉強会や同定会を定期的に行い、調査参加者のモチベーションやレベルアップが図られた。 平成25年度には調査区の分担が決まり、チェックリストや調査区の地図を配布し、本格的な植物相調査がスタートした。また、分類の勉強会や同定会は継続し、会員も増加傾向にあり、植物誌改訂へ向けての道筋が見えてきたところである。 フランスのパリ自然史博物館には江戸時代末期に横須賀造船所の医師サヴァチェが神奈川県内で採集した標本が多数所蔵されている。これは当時の神奈川県の植物相を知る上できわめて貴重な資料である。この標本調査を平成24年度に予定していたが、パリ自然史博物館の標本庫改修のため延期されてきたが、平成26年度に調査が行えることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度より定期的に行っている植物分類の勉強会はきわめて好評であり、調査参加者のレベルアップにつながっている。特に、植物分類の勉強ができることを理由に、調査会に入会するケースが多くなっており、定期的な勉強会を行うことの効果は大きい。今後も継続して勉強会を行う。また、調査会会員が増加していること、調査が順調にスタートしたことから、会員勧誘のためのチラシの作成は見送ることにした。 引き続き、植物分類学会や生態学会などの機会を利用して、他県との情報交換を行うとともに、隣接県のアマチュア研究者との連携をはかる。 平成26年度の前半にパリ自然史博物館のサヴァチェ標本の調査を行い、歴史的な標本データの蓄積を行う。 改訂版植物誌の執筆要綱の整備や、執筆者の選抜を行う。アマチュアの執筆者には専門的な知識を得る機会を作る。
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次年度の研究費の使用計画 |
江戸時代末期にフランス人の医師サヴァチェが採集した神奈川県産の標本がパリ自然史博物館に所蔵されている。この標本調査を平成24年度に行う予定であったが、パリ自然史博物館の維管束植物標本庫の改修工事のため、調査を延期してきた。そのための旅費(300,000円×3名)が繰り越されている。この標本調査は平成26年5月下旬から6月初旬にかけて行う。平成25年度末に参加予定の植物分類学会は館の行事等が重なり、3名中1名しか参加できず、その旅費の支出が行われなかった。植物分類の勉強会の講師を外部から招く予定で講師謝金を用意していたが、平成24年度および25年度の勉強会の講師は研究代表者と研究分担者が行ったため支出しなかった。神奈川県植物誌調査会の会員を勧誘するためのチラシを印刷する予定であったが、勉強会の評判がよく、勉強会へ参加目的で調査会へ入会する者が多く、チラシの作成を見送った。 パリ自然史博物館所蔵のサバチェが神奈川県で採集した標本の調査を行う。外国旅費300,000円×3名の支出を予定している。引き続き植物分類学会など国内で行われる学会や研究会に参加し、植物の分類や、植物相調査の情報収集を行う。そのための国内旅費として200,000円×3名の支出を予定している。調査員のレベルアップや調査能力向上のための勉強会に講師を2名ほどを招くための謝金および交通費を200,000円ほど予定している。図書や文献購入のための消耗品費を300,000円程度予定している。
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