本研究は、身近であるが日常的な生活リズムでは認識しにくい自然現象を、インターバル撮影によって記録し、編集し、活用するまでの一連の手法の構築を目的としたものである。この際、記録する自然現象をその継続時間によって、短時間スケール、中時間スケール、長時間スケールに区分し、各時間スケールに応じた手法の構築を目指した。 短時間スケールの現象として宮崎県綾町と長崎県対馬市の照葉樹林において「天然林の林床における光環境の日変化」を、多様な生物の生息する北九州市の曽根干潟において「干潟における潮の干満」を、研究代表者の勤務する博物館(北九州自歴博)に設置された二次草原において「草原性植物の開花」をテーマとし、撮影手法の確立に向けた現地撮影を実施した。また、中時間スケールの現象として沈水植物ガシャモクの国内唯一の自生地において「ため池の水落し」をテーマとした現地撮影を実施した。これらの現地撮影により、短時間及び中時間スケールの撮影手法はほぼ確立することができた。なお、当該池では、再び水を満たした後のガシャモクの成長や周辺環境の季節・年変化という長時間スケール現象の記録手法構築に向けた撮影を継続中である。 現地撮影で得られた一次映像資料を展示用画像とするための編集手法を検討し、当該自然現象の「視覚化」のための編集手法はある程度構築できた。さらに、鑑賞者にそれら自然現象の「知覚化」をもたらすための編集手法を検討している。また、より効果的な撮影・編集手法の構築に向け、最終年度に北九州自歴博の特別展において展示用画像の放映を実施し来館者の行動観察を行ったが、当特別展入館者が12万人超と盛況であり、混雑を避けるためアンケート調査は実施できなかった。 これらインターバル撮影に加え、当初の研究計画には挙げていなかった「高速度撮影」の手法及び研究用・展示用の編集手法の検討も研究分担者によって実施された。
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