研究課題/領域番号 |
23501237
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小口 高 東京大学, 空間情報科学研究センター, 教授 (80221852)
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キーワード | 地形 / 地理情報システム / デジタル標高モデル / 谷 / 山地 |
研究概要 |
平成24年度の初頭には、前年度に引き続いて研究の背景の学術的な理解を深めるために,本研究の主要な手法である地理情報システム(GIS),デジタル標高モデル(DEM),およびリモートセンシングを利用した地形学の研究に関するレビューを行った。レビューの際には,上記の手法の背景となる歴史的な発展,たとえばアナログ的な手法による地形の測量や計測に関する古典的な成果から,最新の技術や概念に関するまとめを行い,さらに今後の発展の可能性を論じた。その結果は,平成24年度末に海外出版社による英文誌(Treatise on Geomorphology)に3編公表された。さらに、イタリアで開催された地形の計測的手法に関する国際学会で、研究の動向と将来への展望を、招待講演として発表した。この際には,参加していた多数の研究者と建設的な議論を行った。 その後は,多量のDEMデータを用いて世界の多様な山地の谷地形と、その形成を支配すると考えられる斜面プロセスについて検討を行った。調査地域は日本の北アルプス・高原川流域、台湾中央山脈、中国広東省丹霞山、アラビア半島西部である。これらの研究は指導している大学院生とともに行った。この際には、日本と台湾については反復して発生する斜面崩壊の効果を重視し、中国とアラビア半島については流域の地質と長期的な地殻変動の効果を重視した。これらの研究の成果として、2013年5月の日本地球惑星科学連合大会と、同年8月の京都国際地理学会議およびパリの国際地形学会議で、10編以上の発表を行うことになっている。 また、三陸のリアス海岸を対象に、谷の地形に対する通常の流水による地形プロセスと、津波による侵食の寄与の度合いを検討した。これは東日本大震災や将来の防災と関連する内容であるが、谷の地形に関する本研究課題の中でも重要と考え、積極的に取り組むことにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度から行ってきた既存研究の詳細なレビューと、それに基づく研究の基礎となる仮説の構築と提示を、年度前半に終えることができ、年度内に出版することができた。また,年度を通じて地形の具体的な調査や分析を多数の地域について行うことができた。後者の具体的な地形の研究については、年度内に成果を学会発表や論文で公表することができなかったが、学会発表の申し込みと要旨の投稿を積極的に行い、次年度にはすでに10件以上の発表が予定されている。このため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は本研究の最終年度であり、複数の地域における地形研究を継続し、論文として投稿できるレベルに高めることを最大の目標とする。現時点では、日本アルプス、台湾、中国、アラビア半島のいずれの地域の検討においても、学会発表が可能なレベルには達しているが、論文にするためには追加の解析による結果の検証や、結果の学術的な解釈と意義付けが必要である。この作業を積極的に行い、論文の投稿を行う。 日本アルプスについては、日本国内という地の利を活かし、現地調査による詳細な検討を行う。この際には、地上型レーザースキャナーを導入し、解像度が数十cmのデータを取得し、谷や崩壊地の形状を詳しく調べる。また、三陸の谷についても、現地調査と地形のスキャンニングを行う。 また、前記のように国内および国際学会で研究発表を行うことが予定されているが、その際には他の研究者と積極的に議論を行い、研究の質を高めることを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に東日本大震災の影響で執行金額が予定よりも大幅に少なかったことが原因で、当初の予定よりも多い額を最終年度に残しているが、上記のように現地調査と学会発表を中心に有効活用する予定である。現地調査は中部山岳地域と三陸を主な対象とする。さらに国内・国外の学会発表,データ解析のためのアルバイトの雇用,英文論文の校閲などに予算を使用する。
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