研究課題
平成25年度には、前年度までに行った本研究の主要な手法である地理情報システム(GIS)、デジタル標高モデル(DEM)、およびリモートセンシングを利用した地形学の研究に関するレビューを踏まえて、事例研究を各地で展開した。具体的には、多量のDEMデータを用いて世界の多様な山地の谷地形とその変化の過程、およびそれらを支配すると考えられる斜面プロセスと土地条件について検討を行った。前年度までに研究がある程度進んでいた北アルプス・高原川流域、三陸地域、台湾中央山脈、中国広東省丹霞山、アラビア半島西部について、指導している大学院生や他機関の研究者と連携して研究を行い、検討を深めた。さらに最近の地震の際に斜面地形が地すべりによって大きく変化したことが知られている新潟の丘陵地についても新たに検討を行った。これらの事例研究の成果を複数の査読論文や国際学会での10件以上の発表を通じて公表した。研究の際には、北アルプス、新潟、台湾については反復して発生する斜面崩壊の効果を重視し、中国とアラビア半島については流域の地質と長期的な地殻変動の効果を重視した。また、三陸ではリアス海岸の谷の地形に対する通常の流水による地形プロセスと、津波による侵食の寄与について検討した。これは東日本大震災や将来の防災と関連する内容であるが、谷の地形に関する本研究課題の中でも重要と考え、積極的に取り組んできた。さらに斜面地形の分析の結果を河床に沿って分布する遷急区間や流域からの土砂流出と関連づけて考察するために、日本全国を対象に過去に行われてきた検討の結果を再評価し、新たな関係を見いだした。これらの結果は国際誌に2本の査読論文として公表された。
2: おおむね順調に進展している
日本、中国、台湾、およびアラビア半島という複数の地域の地形について、ある程度まとまった研究の成果を得ることができ、その具体的な内容について国際学会での10件以上の発表を行った。また、4件の英語論文を公表した。こららを考慮し、おおむね順調に進展していると判断した。ただし研究の中には検討の一部に修正を要するものがあり、その作業を翌年度に行い、さらなる成果の公表を行っていくために、研究費を一部繰り越した。
新潟や台湾といった研究結果が確定していない地域を中心に、斜面崩壊の分布や斜面地形の特徴について新たな統計解析モデルの適用等を行い、より適切な結果を得るようにする。その成果を国際学会や英語論文として公表する。また、新たな科研費などの獲得による研究の発展について計画を立案する。
平成25年度に日本や中国における斜面の地形変化に関する分析を行い、その結果を指導学生と平成25年12月の国際学会で発表する予定であったが、いくつかの分析結果が予想と大きく異なり、その原因を検討したところ、新たな統計モデルを導入する必要があると判明した。このため、計画を変更し、新たなデータ分析と国際学会での発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。おもに平成26年8月に開催されるAOGS(アジアオセアニア地球科学学会)の国際会議における発表に使用する。研究を共同で行ってきた複数の学生と参加し、連名の発表を複数行う。また、データ解析に利用する計算機関係の消耗品にも使用する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (13件)
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