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2012 年度 実施状況報告書

災害脆弱性評価に向けた日本の沖積平野の地形形成モデルの構築

研究課題

研究課題/領域番号 23501238
研究機関東京大学

研究代表者

須貝 俊彦  東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (90251321)

キーワード沖積層 / 沖積低地 / 地盤変動 / ボーリング
研究概要

関東平野の東京湾岸地域および利根川・中川低地を中心として、既存ボーリング柱状図を収集・解析して、沖積層の基底地形を復元するとともに、パーカッション式コアラーを用いて、沖積層を採取し、粒度や化学組成を分析した。
東京湾岸地域では、沖積層基底の埋没谷地形が東北日本太平洋沖地震時の液状化の発生の拘束条件となっていること、とくに、埋没谷に挟まれた埋没河間低地と、埋立地よりも内陸側の旧干潟では液状化が生じにくかったこと、が示唆された。埋没谷の中心付近の直上では、沖積層の層厚が大きいため、地盤変動が生じやすいことは容易に想像されるが、本研究によって、埋没谷の谷壁斜面の直上でも地盤変動が生じやすいことが明らかになった。
利根川下流部では、海面上昇期~高海水準期に形成された埋没沿岸砂州の分布域においては、東北日本太平洋沖地震時の地盤変動が面的に広がった可能性を指摘した。従来、新潟平野の海浜砂州から砂丘列の周辺で地盤変動が生じやすいことは指摘されてきた。本研究により、完新世初期の古い時代に形成され、現在は河成洪水堆積物やデルタ堆積物によってほぼ埋没されつくしている砂堆堆積域においても、地表変動が生じやすい可能性が高いことが明らかにされた。
中川低地では、縄文海進時に形成されたラビンメント面の分布北限付近を狙って、コアリングを実施し、埋没ラビンメント面を確認するとともに、同地形面の分布限界が、液状化されやすい場所の境界とおおむね一致する可能性を示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究を2010年度に申請後、東日本大震災が発生し、沖積平野の災害脆弱性が注目されるようになり、その結果、地盤変動の記載と沖積層の分析が公的研究機関によって一気に強力に推進され、研究計画全体の見直しを余儀なくされる状況におかれた。基盤c継続中につき、他の項目の科研費の追加申請が一切できず、一方で、震災の影響等で分析機器の不具合が生じ、それへの対応と学生管理上の業務の増大が重なり、1次データの取得ペースはやや遅れている。しかし、沖積低地の脆弱性評価項目として、地形発達を踏まえた埋没基底地形の重要性を確認することができ、研究パフォーマンスとしては、概ね順調に成果があがっていると評価している。

今後の研究の推進方策

上述のとおり、本科研費申請後、研究をとりまく社会情勢や国費による研究費の配分状況が一変したため、今年度は、そうした社会現象を冷静に受けとめ、基礎研究としてこれまで細々と蓄積してきた成果を総括するとともに、来年度以降の研究展開をはかるための準備的要素を含めた研究の推進を図りたい。

次年度の研究費の使用計画

申請時に研究対象とした新潟平野を、これよりはるかに小規模な高田平野に変更するとともに、三陸平野を対象に加えて、東日本大震災を通じて沖積平野の脆弱性が露呈した地域とその近接域を分けた自然要因はなんであったのか、という視点から、改めて、沖積平野の発達史と地形構造を解析する手法開発に取り組む。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 濃尾平野沖積層の重金属2012

    • 著者名/発表者名
      若林徹・須貝俊彦・笹尾英嗣
    • 雑誌名

      地学雑誌

      巻: 121 ページ: 441-459

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Fluvial response to sea-level changes since the latest Pleistocene in the near-coastal lowland, central Kanto Plain, Japan2012

    • 著者名/発表者名
      Ishihara, T., Sugai, T. and Hachinohe, S.
    • 雑誌名

      Geomorphology

      巻: 147-148 ページ: 49-60

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Activity of the Yoro fault system determined from coseismic subsidence events recorded in the Holocene delta sequence of the Nobi Plain, central Japan.2012

    • 著者名/発表者名
      Niwa, Y., Sugai, T. and Yasue, K.
    • 雑誌名

      Bulletin Seismological Society of America,

      巻: 102, ページ: 1120-1134.

    • DOI

      10.1785/01201102111

    • 査読あり
  • [学会発表] 東北地方太平洋沖地震での液状化発生場所から見た液状化発生条件の検討2013

    • 著者名/発表者名
      若山大樹・須貝俊彦
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2013年大会
    • 発表場所
      幕張メッセ
    • 年月日
      20130523-20130523
  • [学会発表] 木津川下流域における天井川の発達過程と人間活動2013

    • 著者名/発表者名
      石川 怜志・須貝俊彦
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2013年大会
    • 発表場所
      幕張メッセ
    • 年月日
      20130523-20130523
  • [学会発表] トンレサップ水系セン川下流域氾濫原の地形発達2013

    • 著者名/発表者名
      南雲 直子・須貝俊彦・久保純子
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2013年大会
    • 発表場所
      幕張メッセ
    • 年月日
      20130523-20130523
  • [学会発表] 後期更新世から現在までの日本海上越沖における環境変動2013

    • 著者名/発表者名
      滝沢みちる・須貝俊彦・松本良
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2013年大会
    • 発表場所
      幕張メッセ
    • 年月日
      20130523-20130523
  • [学会発表] 八幡平火山大谷地湿原の形成過程と地すべり活動の関係2013

    • 著者名/発表者名
      佐々木夏来・須貝俊彦
    • 学会等名
      日本地理学会春季学術大会
    • 発表場所
      立正大学熊谷キャンパス
    • 年月日
      20130329-20130330
  • [学会発表] 荒川・妻沼低地と中川・渡良瀬低地の幅からみた地形発達の比較2013

    • 著者名/発表者名
      石原武志・須貝俊彦
    • 学会等名
      日本地理学会春季学術大会
    • 発表場所
      立正大学熊谷キャンパス
    • 年月日
      20130329-20130330
  • [図書] 海津正倫編「沖積低地の地形環境学第2章、第10章」2012

    • 著者名/発表者名
      須貝俊彦
    • 総ページ数
      179
    • 出版者
      古今書院

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公開日: 2014-07-24  

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