研究課題/領域番号 |
23501244
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
宮縁 育夫 熊本大学, 教育学部, 准教授 (30353874)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 草原植生 / 植生変遷 / 阿蘇カルデラ / 火山 / 噴火活動 / 人間活動 |
研究概要 |
阿蘇カルデラとその周辺域には約220平方kmに及ぶわが国最大級の草原が広がっており、『日本書紀』などの記載から"千年の草原"といわれてきたが、科学的な根拠に乏しいことが問題であった。 本研究の目的は、この阿蘇の草原が (1) いつの時代から存在するのか、(2) どのような植生種によって構成されてきたのか、(3)どのような要因によって、草原が成立して維持されてきたのかを地質学的調査と植物珪酸体分析および微粒炭分析を行うことによって科学的に解明することである。 初年度にあたる平成23年度は,阿蘇カルデラ周辺域において調査地点を設定することから開始した.植生構成種やその変遷は地域や地形によって異なると考えられるため,カルデラの内部と周辺域など地域別のほか、カルデラ床・カルデラ壁(急斜面)・カルデラ外の緩斜面(外輪山)といった地形の異なる地点において調査地点を設定した。それぞれの断面において、堆積物層序の詳細な観察・記載と試料採取を実施し、次年度以降の分析のために整理・保管を行った。 本年度の主要成果は、植生変化などの環境変遷に関する研究を行う上で最も基礎データとなる阿蘇カルデラ周辺域における最近約9万年間の噴出物層序を構築して噴火活動史の概要を明らかにしたことである。また阿蘇カルデラを形成する巨大火砕流噴火以降の植生変遷の概観を1地点で把握したことも重要な点である。これらの成果は、ともに国際学術雑誌(査読付)に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、調査地点の設置を実施するとともに、基礎データとなる阿蘇カルデラ周辺域における最近約9万年間の噴火活動史と植生変遷の概要を明らかにするなど、研究はおおむね順調に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
阿蘇カルデラ周辺域における地層の年代はおおよそ把握しているが、さらに時間分解能の高い環境変遷を検討するため、加速器質量分析(AMS)法による放射性炭素年代測定を実施する予定であった。しかしながら、年代測定に耐えうる試料を現地調査で発見することができなかった。次年度は十分な現地調査を行って、目的を達成できるような年代測定試料の発見に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に使用できなかった研究費は、次年度に分析試料を発見・採取するための現地調査と分析費用(専門機関に依頼)、論文別刷代(23年度に出版社から請求がなかった)などに支出する。
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