わが国最大級の面積を誇る阿蘇カルデラ周辺域の草原の歴史と成立要因について,植物珪酸体および微粒炭分析によって科学的に検討を行った.その結果,同地域では基本的に最近約9万年間にわたってイネ科草本が優占する草原植生下にあったことが明らかとなった.ただ,完新世(最近約13500年間)においては,カルデラ西方域でタケ亜科植物を主体とした草原,東方域ではススキ属を主体とした草原が続いていたなど,地域によって草原植生の構成種に明瞭な違いが認められた.こうした植生変遷の違いは微粒炭分析の結果から判明した火事発生頻度と密接な関係があると考えられる.
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