研究課題/領域番号 |
23501246
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
山崎 晴雄 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (70260784)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 黒滝不整合 / 上総層群 / テフラ層序 / 関東平野 / 形成プロセス |
研究概要 |
鮮新世~更新世前期に形成された日本の堆積盆地には、300万年前(3Ma)頃に不整合が形成されていることが多い。これらは、陸上侵食ではなく、海底に地層が堆積している間に形成されたものである。このような不整合は海底地すべりによって、堆積した地層が除去されたことで作られた可能性がある。しかし、地すべり発生の原因については3Ma頃の汎世界的な気候寒冷化が原因とする考えが多いが、深海コアデータからは急激な寒冷化は認識されていない。なた、プレート運動の転換など広域的な地殻変動も原因の可能性があるが、具体的な証拠はない。この問題を解決するには、不整合の形成プロセスと時期を明らかにする必要がある。 そこで本研究では房総半島の黒滝不整合に対し、詳しい調査を行って不整合の形成時期や形成プロセスを解明することとした。形成時期については不整合を最初に覆う水中堆積火山灰層(テフラ)の同定対比から発生時期を推定する。また、形成プロセスについては同時期に地すべりが発生した範囲をテフラから識別すると共に、海底地すべりと不整合が両方観察できる福島県浜通地域の仙台層群富岡層を調査し、地すべり形成プロセスを解明して、房総半島の黒滝不整合と比較することとした。 平成23年度は房総半島と福島県浜通の両地域で野外調査を行い、火山灰試料の採取や地質構造の観察を行う予定であったが、3月11日の大震災で福島第一原子力発電所が水素爆発を起こし、野外調査を予定していた福島県の富岡町や大熊町の地域が立ち入り禁止になってしまった。そのため、調査は房総半島のみで行い、君津市の三島湖や亀山湖付近で、黒滝不整合はKd39テフラ(1.76Ma)に最初に覆われることが分かった。また、火山灰対比の精度を上げるため、秋田など他の堆積盆地で3Ma 前後のテフラ試料の採取を行った。しかし、研究室が震災を受けたため、試料分析に遅れが出ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.計画では調査予定であった福島県浜通り地域が、原子力発電所の事故の関係で立ち入ることができず、全く調査が行えなかった。現在、海底地すべりと不整合の関係を知ることができる可能性があるのはこの地域だけなので、形成プロセスに関する解明は全くできなかった。2.3.11の大震災により、首都大学東京の研究室も書架崩壊、実験室破損などの大きな被害を受けた。応急復旧やその後の耐震化工事などで、研究は中断を余儀なくされ、試料分析作業が十分実施できなかった.野外調査で火山灰試料は集めたが、その分析作業にはかなりの滞りが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、福島県浜通り地方の立ち入り禁止措置は解除される見込みはないが,一部地域は規制が緩和されており、本研究終了時までには野外調査を実施できるかも知れない。そのため、研究計画の大幅な変更は行わず、海底地すべり形成プロセスの研究は文献調査を中心に行い、野外調査ができるようになる機会を待つ。 房総半島の調査は着実に実施し、各地で不整合を最初に覆うテフラの識別・同定・対比に努める。また、調査地域を三浦半島や関東平野西部に広げ、不整合を覆うテフラの調査を行う。また、テフラの同定・対比・編年の精度を高めるため,秋田や新潟、北陸など他の堆積盆地についても火山灰試料の採取や微化石データとの関係解明などを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
使用予定額は120万円(間接経費は除く)であり、物品費に45万円使用する。主な購入品は調査・実験用消耗品(薬品、器具、地形図、サンプル袋、屈折率測定用試薬)、プリンター関係消耗品(ドラム、トナー)である。 旅費は30万円で主に、房総半島の調査に使用する。また、既存文献等から、他の堆積盆で3Ma前後のテフラの存在が判明した場合は、その試料採取を行うために使用する。 人件費・謝金は分析作業等で人手が必要になる場合を考慮して5万円を用意する。 その他の経費は40万円で野外調査のレンタカー代金、有料道路等の使用料、火山ガラスの分析のための純化作業外注費、ICP分析外注費に使用する。
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