最終年度の研究成果:房総半島及び三浦半島、長野県佐久盆地周辺、秋田県田沢湖周辺などで火山灰試料の採取とICP発光分析を行った。ICP発光分析については海外の分析機関へ依頼することにより、これまで溜まっていた火山灰試料の分析データを得ることができた。 房総半島銚子の上総層群最下部層(名洗層)中のIn1火山灰は、ICP分析の結果三浦半島池子層中のIk1火山灰に対比できることが分かった。また、In1は掛川層群最下部堀之内互層中のB25にも対比できる。Ik1の年代はナンノ化石や古地磁気層序から3.1Ma以前、或いは3.3Ma以前と見積もられる。これから、銚子付近には黒滝不整合は存在せず最下部の上総層群は3.1Ma以前までさかのぼることがわかった。同様に、三浦半島においても池子層やその上位の上総層群最下部と言われる浦郷層には堅調な不整合は認められず、顕著な不整合が存在するのは房総半島の中だけであることが明らかになった。 研究期間全体の研究成果:上総層群下部や黒滝不整合の上下に分布する火山灰層を採取・分析し、上総層群中や不整合を覆う最も古い火山灰層の同定・対比を行った。その結果、黒滝不整合は上総層群の基底に広く存在しているわけではなく房総半島に存在が限定されること、上総層群とその下位の三浦層群との境の年代は3.1Ma以前にまで遡ることが分かった。これから、不整合の起源は汎地球的な海水準や気候の変化ではなく、現在の房総半島地域に限定される、大規模だがローカルな海底地すべりによるものである可能性が高まった。海底地すべりのメカニズム等については福島県南部に分布する仙台層群富岡層を対象に調査を計画していたが、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震による原子力発電所の事故発生で、この地域が立ち入り禁止となり、現在までそれが解除されていないため調査は実施出来なかった。
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