研究課題/領域番号 |
23501251
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
森田 喬 法政大学, デザイン工学部, 教授 (60267325)
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キーワード | 記号 / コンテクスト / ベルタン / 地図学理論 |
研究概要 |
本研究はベルタンの地図学理論を今日的コンテクストの中に位置づけることを目的としているが、本年度実施予定であったフランス国立図書館地図部門における彼の遺稿の調査が出来なかったため、彼の理論の受容の文化的相違の観点から文献調査を行った。 地図分野には、地図の作成者、利用者、そしてメタ地図学として地図のあり方を探る立場がある。ベルタンは地図の作成者として情報の視覚表現に有効な視覚変数の概念を確立し、さらにそれを操作的に扱う発見的過程を組み込むことにより作成者でもあり利用者でもある状況の基本的枠組みを提案した。さらに、地図は視覚言語であり、地図そのものにより視覚的にメッセージを発信しているが、それに説明という自然言語を追加する事により、視覚言語と自然言語が一体となった「語り」の構造を示すまでに至った。 視覚変数は、一義性を基本に据えて展開するから情報の記号変換が基本的機能である。しかし、視覚記号は与えられた視野の中に存在するものであり、注視順序や図と地という与えられたコンテクストのなかで存在するものである。同じ記号であっても、その置かれているコンテクストが異なると機能にも相違が生じる。これらについては、可読性やノイズの観点から触れられているが、多義性への議論の展開はみられない。 地図記号には記号の形が暗黙の意味を与える象形的・象徴的な機能もあり、また表意文字では文字自体が多義的な機能を持っている。漢字文化圏では背景図と文字が一体となった視覚表現も多数見られる。そこには、記号の一義性と多義性が併存する運用体系がある。 ベルタンの理論は記号の一義性を基本に据え、足りない部分は語りで補うという展開を見せた。両者の分担関係には基本的な方略が必要である。それがどのようなものであり、多義性についてはどのように処理されたのか、遺稿を通して確認する作業が残された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
予定していたベルタンの遺稿調査が実施できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
未実施となっているフランス国立図書館地図部門における遺稿調査を行い、視覚記号の多義性と一義生の分担関係、および空間的コンテクストの枠組みの観点からまとめの考察をすすめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していたフランス国立図書館地図部門における調査が日程調整の不都合により実施できなかったため渡航費が未使用となった。 フランス国立図書館地図部門における調査を実施するための渡航費、および関連資料の購入費として当てる。
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