研究課題
本研究では、ヒマラヤ交易が畜産物の交易という形で現在でも継続することを示すことを目的とする。そのため、現地調査によって、次の4点を明らかにするとした。すなわち、(1)山地における畜産物の流通過程、(2)山地における交易と自動車道路との相互関係、(3)交易センターとしての首都の役割を解明することで、(4)交易ネットワークを支える諸条件を考察することをめざした。平成23年度には、(1)の目的を明らかにするため、東部山地と中部山地で羊毛や鶏肉を中心とする取引の調査をおこなった。また、平成24年度には(1)に関して東部と中部の山地で定期市や商店を調べると同時に、(2)の自動車道路における交易の現状を調べた。平成25年には、(3)首都カトマンズにおける畜産物の流通を把握することを目的に、調査をおこなった。①チベット産やニュージーランド産の羊毛をどのように仕入れるのか、カトマンズの卸売市場で調査をおこなった。この結果、チベット産、ニュージーランド産の羊毛双方の値段や流通シェアーを把握できた。また、モンゴル産のパシミナが中国、インド経由でネパールに輸入されていた。②首都カトマンズにおける肉市場の調査をおこなった。山羊と羊の肉については東部山地から流通してくることも確認した。また、秋にはチベット産の羊が肉として流通することも確認した。鶏肉については、中部低地でその取引の実態を調査した。③乳製品については、政府の乳業会社に聞き取りへ行き、収入経路や加工工程を知ることができた。以上の調査から、(4)山地と首都をつなぐ畜産物の交易ネットワークの一端が明らかになった。それを支えるのは、山地における農民、牧畜民、商人であると同時に、現在では、定期市のような市場や自動車道路、絨毯産業のような輸入した材料を用いた生産システムも確立しており、生産した商品を海外の市場へ出荷するビジネスが展開することがわかった。
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