研究課題/領域番号 |
23501254
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
奥野 充 福岡大学, 理学部, 教授 (50309887)
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研究分担者 |
和田 恵治 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (50167748)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | テフラ / 放射性炭素年代 / アリュート遺跡 / 噴火史 / 噴火災害 / アダック島 / アリューシャン列島 / アラスカ |
研究概要 |
米国,アラスカ州,アリューシャン列島中央部のアダック島南西部にあるスリー・アーム湾で,テフラ層序学的調査を実施した.アダック島は通常,調査できる範囲が米軍跡地である北部に限られており,テフラの分布傾向を把握できていなかった.2012年夏にはアラスカ・アンカレッジ大学のDiane Hanson 博士のグループが,同地域のアリュート遺跡を発掘している機会にあわせて,同年7月に周辺のテフラ層序を調査した.今回の調査は,これまでの調査域を拡大するもので,同島に分布するテフラの分布傾向を知る良い機会となった.テフラの分布傾向を明確にできると,テフラの給源火口や規模,さらには噴火の自然・人間への影響を検討することができる.炭化木片の放射性炭素年代を測定しており,テフラに対して精度の良い年代を与えることができた.2011年12月には,アメリカ地球物理学連合(サンフランシスコ)においてアダック島のテフラ層序に関する成果をポスター発表し,メイン,インターメディエイト,サンドイッチの3枚の顕著なテフラ層が,西隣のカナガ島ではなく,アダック島北端のアダグダック山から噴出した可能性を指摘した.もしこの見解が正しいと、アダック島で完新世に噴火したことになる.また,給源の一部は海面下にあり,将来,噴火すると津波も発生する可能性もある.その機会にシアトルとアンカレッジに立ち寄り,共同研究者のLyn Gualtieri博士(シアトル大学)やHanson博士と今後の研究打ち合わせをした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
7月に現地調査を実施して,テフラの分布傾向を明確にできた.これはテフラの給源火口や規模,さらには噴火の自然・人間への影響を知るうえで,重要なことである.しかし、昨年夏の調査は,研究分担者である和田恵治氏やLyn Gualtieri博士と日程調整ができず,一緒に調査ができなかった.Hanson博士らのアリュート遺跡の調査チームとも連携をはかり,今後の調査・研究を進める体制もできつつあるので,遺跡との関連も議論できよう.放射性炭素年代測定はほぼ完了しており,火山ガラスの化学組成や岩石記載学特徴を踏まえて,これまでの層序との対比を進めたい.
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今後の研究の推進方策 |
初年度は,研究協力者と一緒に現地調査が出来なかったが,2012年度は全員で調査できるよう日程調整を進めている.また,採取試料についても,室内分析を進め,2012年度末までには一定の結論をまとめたいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
2011年度は,遺跡発掘に現地調査をあわせる必要があり,分担者や協力者らと共に現地調査が出来なかった.このため,未使用分を次年度に使用することとした.2012年度では,この前年度の未使用分もあわせて,1. 東隣のグレート・シットキン島の調査,2. アダック島の完新世噴火の可能性があるアダグダック山の調査,3. シャガク湾沿いの低地の掘削をそれぞれ行うために使用する.これらのための旅費および謝金である.その他,室内分析用の消耗品も計上している.
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