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2011 年度 実施状況報告書

南極大陸周縁域の大陸棚はなぜ深いのか?

研究課題

研究課題/領域番号 23501255
研究機関国立極地研究所

研究代表者

奥野 淳一  国立極地研究所, 研究教育系, 特任研究員 (00376542)

研究分担者 三浦 英樹  国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (10271496)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード大陸棚 / 南極氷床 / 海底地形 / 地球変形 / 海水準変動 / 第四紀
研究概要

本研究課題において最初の基礎的情報となる,南極大陸周縁域の大陸棚地形の解析を行った.地形解析については,傾斜分布,起伏量分布などの地形特徴量の算出を行い,それらの空間分布を明らかにした.また,現在の南極大陸が約3400万年前に起こった,ゴンドワナ大陸から分裂する前の接合部であったと考えられる,それぞれの地域の大陸棚(オーストラリア大陸南岸,南アメリカ大陸西岸,インド大陸西岸,アフリカ大陸東岸)についても,同様の解析を行った.特に,これらの大陸間での深さ1000m以浅の大陸棚深度に注目し比較を行った.その結果,南極以外の大陸の深度はおおむね150mより浅い部分に集中し,150 m以浅の大陸棚が発達しているのがわかるのに対し,南極大陸縁辺部では,そのピークは500mで,その差約350 mに達することが明らかになった.このような解析結果を説明するための粘弾性地球変形モデル,氷床変動モデルの開発を進め,予備的な数値計算結果を得ることができた.さらに,これまでに提案されてきたすべての第四紀南極氷床融解モデルを用いたシミュレーションを可能とするために,南極沿岸地域の海水準変動のデータベースの整備や,現在開発中のシミュレーションモデルに適用可能とするためのモデル構築を行った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度についての当初の研究計画は,次の二つの仮説を地形データの解析から証明することであった.一つは,ゴンドワナ大陸の大陸分裂前の接合部であったそれぞれの地域(南極大陸,アフリカ,インド,オーストラリア)の大陸棚深度は,同じようなテクトニックな作用を経験し,同じ深度になると考えられるという仮説と,二つ目は,南極大陸のみゴンドワナ大陸分裂約3400万年前に起こった寒冷化による巨大な大陸氷床の発達が,地球に対する荷重として働き,縁辺部をアイソスタティックに沈降させているのではないかという仮説である.これらの仮説を証明するためには,かつてゴンドワナ大陸を構成した大陸間での大陸棚地形の数値データ整備と,それを用いた詳細な解析が必要であった.この課題に対し本年度,海底地形の数値データの取得,整備等が円滑に完了し,解析ツールの開発も順調に進めることができ,一部予備的な結果を公表することができた.このことから,おおむね順調に進展していると考えられる.

今後の研究の推進方策

世界各国の研究機関より公開されている南極縁辺部の音波・地震探査による断面プロファイルデータ,およびボーリング柱状データを収集し,堆積層の厚さや氷河堆積物の厚さを2次元的にマッピングして,基盤地形面の深度分布・傾斜分布などの地形特徴量を明らかにする.堆積層も氷床と同じく地球にとっては表面荷重として働くために,その厚さの分布は,地球変形を正確に見積もるための重要な初期値となる.また,人工衛星より得られている地球物理学的データ(重力など)を用いて,地形と重力異常のアドミッタンスを評価し,有効弾性厚(弾性的にふるまう地球最上部の厚さ)の見積もりを行う.この変数も,地球変形シミュレーションの重要な初期値となる.これらの地形・地球物理学的データを地域ごとに比較検討することにより,南極大陸縁辺部の特異性を定量的に明らかにする.さらに本研究課題では,LGMからの氷床変動による地球変形シミュレーションモデルではカバーできない時間スケールの現象を取り扱うので,採用する粘弾性モデル自体もパラメータの一つとして考慮しなければならない.これを実現するためには,これまで用いてきた粘弾性モデルの拡張が必要である.先行研究では,地球をマックスウェル粘弾性物体と仮定していたが,本研究では,ケルビン-フォークトモデルや標準線形固体モデルについても定式化,および数値シミュレーションを可能とするコードを開発し,地球のレオロジーモデルの検討をおこなう.

次年度の研究費の使用計画

物品費としては,本研究課題の成果となる,地形,地球物理,地質学的データベースや,シミュレーションモデルを最終的にインターネット上に公開するための,サーバを構築するためのハードウェア,ソフトウェア購入費に充当することを計画している.また,研究成果を公表するために,国内外における学会発表を行うための旅費や,英文誌に投稿するための英文校閲などいった謝金に充てることを計画している.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Ice-sheet collapse and sea-level rise at the Bolling warming 14,600 years ago.2012

    • 著者名/発表者名
      P. Deschamps, N. Durand, E. Bard, B. Hamelin, G. Camoin, A. L. Thomas, C. M. Henderson, J. Okuno, Y. Yokoyama
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 483 ページ: 559-564

    • DOI

      doi:10.1038/nature10902

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Post-depositional remanent magnetization lock-in for marine sediments deduced from 10Be and paleomagnetic records through the Matuyama-Brunhes boundary2011

    • 著者名/発表者名
      Y. Suganuma, J. Okuno, D. Heslop, A. P. Roberts, T. Yamazaki, Y. Yokoyama
    • 雑誌名

      Earth and Planetary Science Letters

      巻: 311 ページ: 39-52

    • DOI

      10.1016/j.epsl.2011.08.038

    • 査読あり
  • [雑誌論文] グラシオ・ハイドロアイソスタシー2011

    • 著者名/発表者名
      中田正夫,奥野淳一
    • 雑誌名

      地形

      巻: 32 ページ: 327-331

  • [学会発表] Mid-Holocene collapse of the East Antarctic Ice Sheet derived from near-field sea-level changes2011

    • 著者名/発表者名
      J. Okuno, H. Miura, H. Maemoku
    • 学会等名
      XVIII International Union for Quaternary Research - Congress
    • 発表場所
      ベルン(スイス)
    • 年月日
      2011年7月26日
  • [学会発表] East Antarctic Ice Sheet fluctuations in mid-Holocene derive from near-field sea levels2011

    • 著者名/発表者名
      J. Okuno, H. Miura, H. Maemoku
    • 学会等名
      11th Internationarl Symposium on Antarctic Earth Sciences
    • 発表場所
      エジンバラ(英国)
    • 年月日
      2011年7月14日
  • [学会発表] 南極大陸縁辺部における大陸棚深度に対する氷床変動の影響2011

    • 著者名/発表者名
      奥野淳一,三浦英樹,野木義史
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合2011年大会
    • 発表場所
      幕張メッセ(千葉県)
    • 年月日
      2011年5月25日
  • [学会発表] 最終氷期最盛期における南極氷床拡大範囲と氷床量2011

    • 著者名/発表者名
      奥野淳一,三浦英樹
    • 学会等名
      第31回極域地学シンポジウム
    • 発表場所
      国立極地研究所(東京都)
    • 年月日
      2011年11月16日

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公開日: 2013-07-10  

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