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2011 年度 実施状況報告書

急性白血病発症における小胞輸送脱制御の意義

研究課題

研究課題/領域番号 23501256
研究機関東北大学

研究代表者

佐竹 正延  東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (50178688)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード小胞輸送 / ArfGAP / 骨髄異形性症候群 / 急性骨髄性白血病 / 遺伝子ターゲティング
研究概要

膜からの小胞形成過程は、smallGTPaseであるArfと、その活性化タンパクであるArfGAPによって調節されている。SMAP1遺伝子はArfGAPをコードするが、SMAP1(-/-)マウスを作出した所、ヒトの骨髄異形性症候群(MDS)に類似の表現型を示した。平成23年度は、本マウスの病理学的・血液学的解析を詳細に実施した。 誕生後、1年以上を経過した老齢マウスの約半数がMDS所見を示した。即ち、末梢血は大球性の貧血像を示すと同時に、ハウエル・ジョリー小体を含め、様々の異型血球像を含んでいた。骨髄では赤芽球分画の割合が著名に増加していた。実際、骨髄細胞のコロニー・アッセイではBFU-E値が増大していた。赤芽球系統の過形成は骨髄のみならず、脾臓でも観察された。しかし一方では、末梢血の貧血が見られる訳で、赤血球系統の分化異常による無効造血が本態であると考えられた。 野生型マウスの骨髄細胞を、マーカーにより様々の分画に分けて分取し、定量的RT-PCRを行った。MEP分画、Ter119+分画に豊富にSMAP1転写産物が検出された。Tリンパ球以外の他の系統、前駆細胞に微量ではあるが検出はされている。 MDSを発症したマウスのうち、さらに約半数は、急性骨髄性白血病(AML)を発症した。末梢血・骨髄・脾臓などの血液学所見から、白血病は赤芽球性であったり、単球性であったりした。肝・脾への白血病細胞の浸潤も認められた。ヒトMDSがAMLを好発することと、合致する所見である。 以上によりSMAP1遺伝子ターゲティング・マウスを、ヒトMDSのモデル・マウスとして確立することが出来たと考えている。マウスの約半数でのみ、しかも1年以上経ってから初めて発症することから、SMAP1欠損はMDS発症の素因を与えていると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

SMAP1遺伝子のターゲティング・マウスにつき、その血液学的・病理学的解析を予定通り終了した。その結果、本マウスの病像がヒトMDSのそれに酷似することが明らかとなった。しかしながら本マウスをヒトのMDS・モデルとして確立するためには、ヒトMDSにおけるSMAP1の異常の有無についても何らかの知見を得る必要があるが、その面での研究進展は見られなかった。

今後の研究の推進方策

本研究では、増殖因子受容体の細胞内挙動に関連して、下流のシグナル分子の活性化状態を経時的に追跡する。特に、SMAP1(-/-)細胞でのc-Kit分子の輸送異常が、どうシグナルに影響を与えるかを検討する。以上によりSMAP1(-/-)で誘発されるMDS発症の分子メカニズムを解明し、クラスリン小胞輸送と細胞増殖制御の関係をモデル化する。さらに、MDSから白血病続発へのメカニズムに迫る。 SMAP1がトランスフェリン受容体のエンドサイトーシスを調節していることは、Cos7・HeLa細胞などを用いて既に報告した。従ってSMAP1(-/-)の骨髄細胞と(+/+)(+/-)細胞を用いて、本受容体の細胞内取り込み能を、in vitroで測定する。上記で差異が認められたら引き続いて、骨髄細胞を用いてサイトカイン受容体(c-Kitなど)のエンドサイトーシス・シグナル伝達を評価する。SMAP1(-/-)マウスが白血病を発症した場合には、細胞株の樹立を試みる。そしてSMAP1(-/-)細胞株と、それにSMAP1を再導入した場合とで、エンドサイトーシス・シグナル伝達を比較する。受容体のエンドサイトーシスはFCM解析により、シグナル伝達はERK経路などのリン酸化蛋白につきイムノブロット解析する。サイトカイン受容体とクラスリン小胞調節分子の細胞内局在を検討し、SMAP1欠損がどの様にエンドサイトーシス経路を傷害しているのかを解明する。以上の解析により、サイトカイン受容体のエンドサイトーシスをSMAP1が調節していること、その結果としてのシグナル伝達が、細胞の分化・増殖能に影響を与えていることを、モデルとして提唱する。

次年度の研究費の使用計画

上の(今後の推進方策)に記した通り、SMAP1欠損細胞における分子機序についての解析と、(現在までの達成度)に記した通り、ヒトMDSにおけるSMAP1の解析と、両方面からの研究推進が必要である。よって、初年度に消費しなかった分と本来の次年度分との両方を、次年度の研究費として使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] Localization of SMAP2 to the TGN and its function in the regulation of TGN protein transport.2011

    • 著者名/発表者名
      Funaki T, Kon S, Ronn RE, Henmi Y, Kobayashi Y, Watanabe T, Nakayama K, Tanabe K, Satake M.
    • 雑誌名

      Cell Structure and Function

      巻: 36 ページ: 83-95

    • DOI

      10.1247/csf.10022

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Putative terminator and/or effector functions of Arf GAPs in the trafficking of clathrin-coated vesicles.2011

    • 著者名/発表者名
      Kon S, Funaki T, Satake M.
    • 雑誌名

      Cellular Logistics

      巻: 1 ページ: 86-89

    • DOI

      10.4161/cl.1.3.16192

    • 査読あり

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公開日: 2013-07-10  

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