研究課題/領域番号 |
23501258
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中村 正孝 東京医科歯科大学, 医歯学研究支援センター, 教授 (30180392)
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キーワード | hTERT / KLF2 / HTLV-1 / DNAメチル化 |
研究概要 |
細胞の寿命を打ち消すテロメア伸長酵素(hTERT)は、ほとんどのがん細胞で発現しているが、正常細胞では発現がなく対照的である。正常細胞の中でもTリンパ球は例外の一つで、免疫反応時にT細胞の増殖に伴いhTERTの高い発現がある。 我々は、hTERTプロモーター上に新しいDNAエレメントを同定し、そこに転写因子KLF2が結合することを見出した。前年までに休止期のT細胞では、KLF2が発現しておりhTERTの発現はみられなかったが、T細胞の増殖を誘導すると、KLF2の転写は止まり、hTERTが発現することを見出した。これらの結果は、KLF2がhTERTプロモーターに結合して、hTERTの発現を抑制していることを示している。また、hTERTプロモーターの新規エレメントのCpG配列は正常ヒトT細胞ではメチル化は認められないが、ヒトT細胞株、JurkatとKit225はメチル化されていた。今回、成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-1)感染細胞株で、CpG配列のメチル化を詳細に調べた。その結果、KLF2が結合するエレメントのCpG配列がメチル化されているもの、メチル化されていないもの、メチル化と非メチル化が混在するものの3つのグループが存在することが解った。患者由来と言われている細胞株では非メチル化かメチル化との混在で、in vitroで樹立されたHTLV-1感染細胞株はメチル化される傾向にあった。さらにメチル化された新規エレメントにはKLF2が結合しないことを見出した。これは白血病細胞が分裂寿命を回避する上で重要な機構になっているかもしれない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した実験のほぼすべてについて結果を得ることができており、順調に進展していると考えている。それに加え、DNAエレメントのメチル化とKLF2の結合に関し新しい知見が得られ、研究の展開を拡大している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画は順調に推移していて、原申請通りにエピジェネティクの解析実験を進めるとともに、予想に反して患者末梢ATL細胞ではエレメントのメチル化が認められなかったことにも着目して実験を進める。具体的には、宮城県がんセンター研究所と共同研究で、HTLV-1感染細胞株の内でメチル化と非メチル化が混在する細胞株から、メチル化株と非メチル化株をクローン化してそれぞれの免疫不全マウスでの造腫瘍能を解析する。併せて、それぞれの細胞株でのhTERTとKLF2の発現も調べる。特にhTERTプロモーター新規エレメントのDNAメチル化が、どのようにKLF2のエレメントへの結合に影響を与えるかを注意深く解析する。これによりがん細胞でのhTERTの恒常的発現の機構の解明につながる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進展に伴い、研究費の主たる使用は、1.細胞培養、2.DNAメチル化の解析、3.クロマチンのエピジェネティクの解析、4.hTERTとKLF2の発現解析の実験に用いる試薬・器具類になる。
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